「勝負は時の運」というように、実力があってもケガや不運で活躍できないこともある。それだけに神様にすがるスポーツ選手は少なくない。自身が「打撃の神様」といわれ、巨人V9をなしとげた川上哲治氏や、巨人終身名誉監督の長嶋茂雄氏が極秘で通ったのが、宮崎県高千穂町にある「八大龍王水神」だ。
高千穂といえば、天孫降臨など日本神話の舞台。天照大神の岩戸隠れの地とされる天岩戸神社から、さらに東南に1kmほど入った山深い地に同神社はある。
社自体は小さく現在は宮司はいないが、境内にはエノキの老木があり、そのツルが複雑に絡み合って神話の地たる雰囲気を醸し出している。
氏子総代の富高芳章氏に聞くと、
「川上監督がV9時代にいらしたのが野球関係者では最初だと聞いています。宮崎キャンプのオフの日に、マスコミに気づかれないように極秘で来られていたようです。キャンプ地のある宮崎市から、高速道路がなかった当時は片道4時間近くかけていらしていたことになります」
境内には川上氏のほか、藤田元司元監督が寄贈した灯籠も立っている。
「こちらが祀っている八大龍王は水に関わる自然を司る神。特に勝負事の神というわけではありませんでしたが、川上さんがV9という形でお陰(御利益)をお受けになったことで、全国各地からさまざまなスポーツ選手や監督、会社経営者の方々が勝利や成功を願い参拝されるようになりました。
最近でもソフトバンクの内川聖一選手や巨人の杉内俊哉投手、サッカー関係ではベガルタ仙台、ジュビロ磐田、大分トリニータの選手の皆さまが参拝されています」(同前)
※週刊ポスト2016年1月15・22日号