酒場詩人として知られる吉田類氏は、「屋台こそ福岡・博多を訪れる何よりの楽しみです」と話す。
「旅人にとって、屋台ほどその街の風情を味わえるものはありません。知らない土地の居酒屋の暖簾をくぐるにはそれなりの勇気がいるものですが、屋台ならそのハードルは限りなく低くなる。酒や料理が旨いのもさることながら、隣に座った客との距離が近いのもいい。地元客との出会い、そして別れを楽しみながら杯を傾けるのは旅の醍醐味といえますね」
福岡市内には、中洲や天神を中心に150前後の屋台が軒を連ねている。終戦後に引揚者や失業者が始めた移動式飲食店がそのルーツだ。衛生面・美観の面などから厳しい規制が設けられ、全国的に屋台が姿を消していくなか、福岡ではその文化が根強く残る。吉田氏が「いい屋台の見分け方」を語る。
「まず何よりも大事なのは“店の活気”です。明るく誠実な店主がいて旨いものがある屋台には必ずファンが集まる。清潔でこざっぱりしていて、酔客の元気な声が聞こえる店にハズレはありません」
写真で紹介する吉田氏が訪れた屋台は、「花山」(福岡市東区箱崎)。昭和28年創業で、看板メニューは「しろ=豚の腸」(108円)。丁寧に下処理され甘みがあり、柚子が香る特製だしとの相性も抜群。ウインナーや燻製だけでなく塩も自家製にこだわる。
◆よしだ・るい:酒場詩人。1949年、高知県生まれ。人気番組『酒場放浪記』(BS-TBS)のナビゲーターとしてカリスマ的人気を誇る。『吉田類の博多ほろ酔い日記』(RKBラジオ)の収録で定期的に福岡を訪れている。
撮影■松隈直樹
※週刊ポスト2016年1月15・22日号