近年では「文豪」という単語が似合う作家も少なくなったが、かつては文豪と言えば、文化の担い手であるだけでなく、ゴシップの提供者でもあった。三島由紀夫と太宰治の2人も、ガチンコバトルを繰り広げたことがある。
三島由紀夫:「ぼくは太宰さんの文学は嫌いなんです」
太宰治:「嫌いなら来なけりゃいいじゃねえか」【出典:三島由紀夫著「私の遍歴時代」(ちくま文庫)、野原一夫著「回想 太宰治」(新潮文庫)】
1947年、太宰を囲む酒席を訪ねた三島は、あろうことか面と向かってこう言い放った。
虚を突かれたように三島を見た太宰は、吐き捨てるように「来なけりゃいい」とだけ言って顔を背けるしかなかった。三島の太宰に対する嫌悪は相当なもので、何度も自著に綴っている。この日も、嫌いだと言うためだけに赴いたというから驚きだ。
※SAPIO2016年2月号