夜の報道番組の「顔」がまた1人変わる。NHKは4月の番組改編で『クローズアップ現代』を一新、22年間キャスターを務めた国谷裕子氏を降板させる。
「制作現場は『国谷さんを降板させれば、官邸の意向に屈したと邪推される』と懸念したが、最後は上層部に押し切られたそうです」(NHK社会部記者)
確かに、菅官房長官と国谷氏には浅からぬ「因縁」がある。同番組が1年半前に放映した『集団的自衛権 菅官房長官に問う』で、国谷氏は「国際的な状況が変わったということだけで、解釈を変更していいのか」と厳しく突っ込み、菅氏がたじたじになる場面があった。それに対して官邸がNHKに抗議したという報道もあったが、菅氏は否定した。
その後、番組に「やらせ問題」が発覚すると、政府・自民党は異常とも思える“介入”に出た。自民党はNHK副会長を呼んで事情聴取し、高市早苗・総務相がNHKに厳重注意した。
そうした安倍政権のやり方を放送倫理・番組向上機構(BPO)が政治の「圧力」「介入」と批判すると、菅官房長官は「圧力との指摘はあたらない」(昨年11月)と反論し、言論圧力問題論争へと発展した経緯がある。
もっともNHK内部には以前から「国谷氏が長くなりすぎたので交代させたい」という声があったので、官邸の意向がうまく利用されたという見方もある。ジャーナリストの水島宏明氏が指摘する。
「仮に番組改編の理由が不祥事だったとしても、責任は国谷さんではなく制作サイドのチェック体制にある。それなのに国谷さんが降板というのは納得いかない。NHKが官邸の顔色をうかがっているとしたらなおさら本末転倒でしょう」
NHK広報部は「お答えできません」と回答。この問題が“クローズアップ”されては困るのか。
※週刊ポスト2016年1月29日号