ユネスコ世界記憶遺産に南京大虐殺関連史料が登録された。来年(2017年)の「慰安婦関連史料」登録阻止のために何をすべきなのか。
中国が自国の慰安婦調査に乗り出したのは1990年代後半。1999年、上海師範大学に中国慰安婦問題研究センターが設立されると全国規模で調査が始まり、それに呼応して複数の中国人元慰安婦が名乗りを上げた。同時に、中国各地の档案館でも戦時中の文献が精査され、慰安婦関連の史料が次々と公表されるようになった。そんな中国が外交戦のパートナーとしてもっとも”期待”を寄せているのが韓国だ。
中国は2014年1月、韓国の主要メディアを吉林省の档案館(公文書館)に招き、同館が所蔵する旧日本軍作成の慰安婦関連記録を公開。「慰安婦の強制動員を裏付ける決定的史料」として国際社会に喧伝し、後にこれらをユネスコに提出したと見られている。
在韓ジャーナリスト・藤原修平氏が語る。
「中国は档案館で2013年、『独島(竹島の韓国での呼称)は韓国領』と明記した1947年の外交文書を公開し、韓国側に急接近しました。中国側は慰安婦問題研究の中核である韓国『東北アジア歴史財団』とも蜜月関係にあり、慰安婦史料の拡充に向け連帯しています。中韓双方の記録物が充実すれば国際社会に客観性を主張しやすくなり、ユネスコ登録への道が開けると考えているのでしょう」
こうした中国の働き掛けを受け、韓国では慰安婦史料のユネスコ登録推進論がヒートアップ。元慰安婦の福祉や記念事業を担当する韓国女性家族部の金姫廷長官は2015年3月、国連「婦人の地位委員会」に出席し「世界記憶遺産にはホロコーストやアメリカの奴隷制度のように、繰り返してはならない史実も登録されている。日本軍の慰安婦史料も登録されるよう積極的に推進する」と熱弁した。
続く4月には、対日関係などの外交分野を担当する韓国国会外交統一委員会が、元慰安婦の故・金学順氏が日本軍の強制連行を実名告白した8月14日を「慰安婦被害者追悼日」に指定するよう国連に求める決議案を上程している。
※SAPIO2016年2月号