和食に欠かせない「だし」。みなさんはちゃんとひいてますか? 研究によると、味だけでなくストレス改善にも効果があるようだ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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正月の雑煮のように「年末年始だけは、ちゃんとだしをひく」という人は多い。実際、旭化成ホームスの「くらしノベーション研究所」の調査では、「鰹節や煮干し等からだしを取って味噌汁を作る」という設問に対して、「よくある」が14.7%、「時々ある」が18.5%。
つまりふだんから一定の頻度できちんとだしをひく人は、全体の3分の1程度存在する。いっぽう、「全くない」は29.5%。つまり全体の70%以上が、「たまにであっても、だしをきちんとひくことがある」という層である。
そう考えると「日本人の7割が、雑煮のだしはきちんとひく」! ……と言い切るのはいかにも乱暴ではある。だが、雑感としては「きちんとだしを取った雑煮」を口にしている人は、正月に限定すればそれくらいはいるだろう。
近年、だしがヒトの心身に与える効果についての研究が進んでいる。とりわけ日本人にとって身近なかつおだしは、その成分から「疲労感軽減」「抗疲労効果」などが期待されている。なかでも、味の素が大学等の機関と共同で行った、「だしが気分・感情に及ぼす影響」の調査結果が興味深い。
福岡大学と行った研究では2群に分けたグループにプラセボ(偽薬)とかつおだしを摂取し続けてもらい、気分や感情にどう影響をおよぼすかを調査した。プラセボも偽薬とはいえ、本物のだしと同じ産地のかつおぶしを原料とし、香気成分を液化炭酸ガスで抽出したものがベースとなっている。
3週間に渡る実験で、A群は当初の1週間はかつおだし、翌週は休みで、3週めにプラセボ。B郡は逆順での摂取とし、摂取前と摂取後の気分・感情をそれぞれ調査する形だ。