2017年4月に消費税率10%への再増税が予定されているが、経済アナリストの森永卓郎氏は「再度凍結されることは、ほぼ確実」と分析している。その根拠はどのようなものなのか、森永氏が解説する。
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2016年の日本経済は、横ばいか若干のプラス成長を予想しています。というのも、私は安倍晋三総理が2017年4月からと決まっている消費税率の8%から10%への再引き上げを、「再度凍結する」ことがほぼ確実になったと考えているからです。
2016年7月には参議院選挙が待ち構えていますが、今は与党にとって非常に厳しい状況となっています。
まず経済面では、日本経済は2014年の消費税増税からまだ十分に立ち直ってはいません。実は2015年は、物価が落ち着いた中で所得も年金受給額も増えるという、景気に大きな追い風が吹きました。ところが、その状況下でも日本経済は成長できていないのです。
4~6月期のGDPはマイナス成長となり、7~9月期もほぼ横ばいです。このように2014年の消費税引き上げショックから回復していない中で、再び消費税率を引き上げれば、日本経済がデフレに逆戻りする可能性が高いのです。
政治的にも、安倍政権は安保関連法案を強行採決して、国民の大きな反発を買っています。原発の再稼働問題も強硬姿勢が批判されています。さらに、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉で大幅な譲歩を余儀なくされ、普天間基地の辺野古移設問題は裁判闘争に発展する様相です。このように、今後も安倍政権の支持率を下げかねない要因が目白押しなのです。
そうしたことを勘案すれば、長期安定政権を標榜する安倍総理が、参院選で勝利するために打てる手段はただ1つしかないでしょう。2匹目のどじょうを狙って、消費税引き上げを再度延期することです。おそらく、参院選を睨んで2016年6月頃に「延期」を表明する公算が高いと見ています。
安倍総理がそれを表明すれば、再度の消費税引き上げショックの懸念は払拭される。私はそれがほぼ確実に行なわれると考えているので、2016年の日本経済は大きな成長は難しいが、少なくとも横ばいぐらいで推移するというシナリオを描いているわけです。
その際には、日経平均株価は先進国の平均PBR(株価純資産倍率)との比較から導き出せる“本来の水準”である2万5000円を目指す「上げ相場」になっていくと思います。
一方、安倍総理が消費増税延期を決断しなかった場合は、日経平均はじわじわ下落基調を辿るのではないでしょうか。1万6000円程度まで下げる可能性があると見ます。
※マネーポスト2016年新春号