かつて日本もアメリカも世界銀行も、中国は資本主義の市場経済へ進むだろうと楽観し、資本や経営や科学技術を積極的に供与し支援したが、楽観的な予測は裏切られつつある。米国防総省の中国エキスパートとして長くアメリカの対中国政策に関わり、近著『China2049』で中国が建国100年目に達成しようとする戦略について指摘しているマイケル・ピルズベリー氏(現・国防総省顧問)が独占インタビューに応じた。
* * *
アメリカ側では中国が富裕になれば、自国と同じように資本主義や市場経済を発展させ、やがて世界と協調すると思ってきた。ところが現実は異なる。
ほんの一例だが、中国の巨大国有企業トップの社長や会長の人事はみな共産党が決める。日本で自民党が三菱グループや三井グループの大企業のトップを決めることは考えられない。中国は日米両国とは決定的に異質の共産主義国家なのだ。そのような国家がグローバル社会で目指すことも、米側とはまったく異なる。米側はその点を理解しないまま中国を強く豊かにすることに専念してきたのだ。
国連の世界知的所有権機関(WIPO)への特許の出願数をみても中国は4年前にアメリカを追い抜き、首位となった。世界の工業生産シェアでも中国は自動車部品、鉄鋼などで第1位であり、5年後にはさらにその優位を高めようとするだろう。
ゴールドマン・サックス社の会長から財務長官となったハンク・ポールソンは自著のなかで中国政府に国際的な巨大企業の創設を助言した経緯を述べている。