昨年のIPO(新規上場)件数は92件。そのうち、上場後についた初値が公開価格を上回ったのは、92件中82件。“勝率”は89.1%だった。初値が公開価格に対して何%上昇したかという「初値騰落率」で見ても、92件の平均でプラス87%という高パフォーマンスとなった。投資情報サイト『IPOジャパン』編集長の西堀敬氏が語る。
「今年のIPO件数も昨年とほぼ同数の90件前後になると見ています。中国経済の減速や中東、朝鮮半島の地政学的リスクの高まりなどの懸念で、IPO投資の環境は昨年より幾分悪くなり、勝率が80%程度まで落ちる可能性は考えられますが、それでも確率からいえばかなり高い。
したがって、今年もIPO投資戦略としては、できる限りブックビルディングに参加してIPO株を公開価格でゲットし、上場後についた初値ですべて売り抜けるという短期勝負が鉄則といえます」
IPO株を公開価格で購入するためには、幹事に選ばれた証券会社に口座を開設し、その上でブックビルディングに参加する必要がある。多くのケースは抽選となるが、それに当たればゲットできる。一方、初値がついた後に購入して値上がりを狙う「セカンダリー投資」はどうか。
「昨年の実績を見ると、初値に比べて昨年末の株価が下落している銘柄の方が多いとはいえ、銘柄選別次第です。『調達額が10億円以下の小型株で、マザーズに上場する情報セキュリティ関連銘柄』であれば、セカンダリーでも妙味は十分あると見ています」(同前)
では、年内のIPOが予想される有望銘柄は何か。
「4月下旬と予想されるLINEと、10月下旬といわれるJR九州が目玉のIPOとなりそうです。コーヒーチェーン・コメダ珈琲店を展開するコメダも、東証1部に直接上場する可能性があります。
新興市場でのIPOが予想される銘柄では、自動運転技術を開発しているZMP、夢の繊維といわれる人工クモ糸繊維を開発しているスパイバー。さらに、ネットビジネスを展開しているメルカリとはてなも有望候補として注目です」(同前)
※週刊ポスト2016年1月29日号