「土俵にはカネが埋まっている」──これは、貴乃花親方の伯父で、一時代を築いた元横綱・若乃花(故・二子山親方)の名言だ。しかし、そもそも力士の給料は誰から支払われているかご存じだろうか。プロスポーツ選手はほとんどが自営業者(個人事業主)であり、個人がチームと所属契約を結ぶのが普通で、給与もチームから支払われる。その仕組みからいくと力士は所属部屋から給料が出ているように想像できるがそうではない。
力士の給料は一括して日本相撲協会から支払われる。その際には各種税金などが源泉徴収され、力士に渡される。力士は給与所得者であり、相撲協会に勤める“サラリーマン”なのだ。
力士の収入を大別すると、月給、力士報奨金(給金)、懸賞金という3本柱に分けることができるが、ここでは「月給」について解説する。相撲協会の寄付行為細則によれば、番付ごとの基本給である月給は額が固定されている。
横綱=282万円
大関=234万7000円
関脇、小結=169万3000円
平幕=130万9000円
十両=103万6000円
横綱、大関は別格だが、番付1枚ごとに細かく月給が決まっているわけではない。関脇と小結は同じ給料だし、平幕と十両では幕尻だろうが、横綱や三役との対戦が組まれる上位だろうが、給料は変わらない。番付の多少の変動は月給には関係ないのである。
ただし大きく違う番付もある。十両と幕下以下だ。幕下以下には月給が出ない。前述した力士の収入3本柱のひとつ「力士報奨金」も、累積されるだけで関取(十両以上)にならないと支給されない。関取と幕下には天と地ほどの差があるのだ。
「幕下力士にも『場所手当』という給付金(7万~15万円)や、成績に応じた奨励金が相撲協会から所属部屋に対して出ますが、それだけでは自活は無理です。そのため衣食住は所属部屋がすべて面倒を見てくれます。その代わり、彼らは親方や兄弟子の付け人として働いたり、部屋の雑用を務めたりするわけです」(相撲ジャーナリスト)
関取になって初めて、「力士」は一人前の職業として認められるのだ。
ちなみにこれに加えて、年2回(9月、12月)のボーナスも出る(支給額はそれぞれ月額の1か月分)。また三役以上には場所ごとに本場所特別手当(横綱20万円、大関15万円、関脇・小結5万円)が支給される。
※週刊ポスト2016年1月29日号