レジェンド同士の奇跡の対談が実現した。400勝投手として野球界を代表する金田正一氏(82)と、日本人初の米国PGAツアー優勝などゴルフ界を代表する実績を持つ青木功氏(73)。公に対談をするのは今回が初めてだという2人が、野球のONK(王貞治、長嶋茂雄、金田正一)、ゴルフのAON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)に代表される、ライバルとの戦いについて振り返った。
青木:ライバルの存在は大事だよ。でもそれより、自分がどれだけ強くなれるかだろうね。オレはライバルは誰かと聞かれたら、いつも「自分とジャンボ(尾崎)」と答えていた。
金田:いい言葉だな。
青木:ジャンボが出てきてくれてよかったと思うのは、自分の長所も短所もわかったことかな。とにかくアイツは飛ばすんだ。負けじとオレも飛ばしてみたが、それだけでは勝てないことがわかった。飛んで曲がらないジャンボに勝つため、アプローチとパターを徹底的に磨いたんだ。ライバル心むき出しなんてもんじゃなかったよね。時間を忘れるほど練習したよ。それによって世界でも戦えたと思っている。アニキのライバルはやっぱり長嶋さん?
金田:8年も後輩で、デビュー当時で既に182勝していたワシにとってアイツは小僧だ。ライバルではない。だが、確かに意識はしたな。東京六大学のスターだったアイツがデビューすることがわかった時は、それまでの100倍トレーニングして100倍節制した。ワシも自分との戦いだったね。長嶋本人というより、「長嶋人気」がワシの闘争心に火をつけたんだ。
その意味で最近は信じがたい連中ばかりだよ。選手同士で連れ立って、教え合いながら自主トレをする。青木よ、他の選手に技術を教えることなんて……。
青木:ない(とキッパリ)。
金田:だろう? なんで商売敵と一緒にトレーニングするのかさっぱりわからん。
青木:オレらの頃はすべてが独学だよね。師匠ですら「教えてください」なんて頼むと、「オレの技術はそんなに安くねェ」なんてブン殴られたもの。「自分の目で見て盗んで覚える」という時代だからね。
金田:技術は誰かに教えてもらうのではなく、自分で苦しみ抜いて得たものでないと、本当に強い相手とは戦えないよ。
※週刊ポスト2016年1月29日号