2014年に惜しまれつつ亡くなった高倉健と言えば、「口下手だが気は優しくて情に厚い」という、男の理想を具現化したような存在。ところがそんな“健さん”も、若かりし頃は血の気が多い一面もあった。先輩俳優の鶴田浩二とは、こんなやりとりが交わされたという。
高倉健:「やりたかねえけどよう、先輩もいい加減にしてもらわねえとな。許せねえんだ」
鶴田浩二:「本も頭に入れてねえで、立ち稽古や現場に来る奴が役者面するな。ズブの素人もいいところだ」【出典:嶋崎信房著「小説 高倉健 孤高の生涯」】
鶴田浩二は高倉健ら後輩役者を「馬鹿だ」「ズブシロだ」などとこき下ろしていた。高倉ら3人に大泉の撮影所裏に呼び出された時も、特攻隊上がりの意地もある鶴田は挑発を続けた。取っ組み合いの末、吹っ飛んだのは鶴田。『高倉健 孤高の生涯』を著した嶋崎信房氏が当時撮影所長だった岡田茂氏(後に東映名誉会長)から聞いた逸話だ。
※SAPIO2016年2月号