1999年に1トロイオンス当たり250ドル台の底値をつけた金相場は、2001年後半から上昇を続け、2011年には1900ドル超えの最高値をつけた。しかしその後下降トレンドに入り、昨年末には1050ドルを割っている。
絶頂期の半分程度まで価格が目減りしている金を、「今は安値圏で買いだ!」と断言するのは、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏だ。その根拠の一つがアジア圏を中心とした金需要にある。
「インドや中国では、国民が金を嗜好する宗教的背景や伝統があり、金は縁起物として珍重されています。経済成長で国民の所得が増え、それまで金を買えなかった層がこの10年で買い始めたのです」
2001年の金需要は両国合わせて800トン程度だったのが、2013年には2100トンにまで増えている。また、中国やロシア、カザフスタン、ヨルダンといった新興国の中央銀行がこぞって金を買い増していることも亀井氏が強く推す要因だ。
「アメリカの量的緩和によって流入した投資マネーで新興国は輸出が増加し、外貨準備高が増えた。ポートフォリオのバランスを取るために、金の保有比率を上げています。欧米の投機筋が金を売っているのとは対照的に、アジア系の新興国が金を買い支えている構図なのです」
亀井氏が金を推すのはそれだけではない。利息のつかない金はドル金利とは逆相関関係にある。アメリカの利上げが順調に実施されれば、金投資に旨味はないとされる。しかし、実際に追加の利上げができるかどうか、専門家の間でも見方が分かれている。
「年内の利上げの可能性があるのはFRB(米連邦準備理事会)の会合がある3月、6月、9月、12月の4回ですが、市場の大方の見通し通りに利上げが実施されるとは限らない。もし3月の会合で利上げが先送りになれば、これまで利上げを織り込んで売られてきた金は上昇し、年内で1250ドルから1300ドルまで上昇が見込めるでしょう」(同前)
※週刊ポスト2016年1月29日号