ユネスコ世界記憶遺産に南京大虐殺関連史料が登録された。来年(2017年)の「慰安婦関連史料」登録阻止のために何をすべきなのか。日本はユネスコへの分担金・拠出金停止の可能性を示唆したが、それにより日本がさらに蚊帳の外に置かれる懸念もある。
明星大学・高橋史朗教授はこう語る。
「むしろ重要なのは、記憶遺産登録に関係する地域レベルの活動に積極関与することです。たとえば、IACに対し世界記憶遺産の登録を働きかける地域の諮問委員会『MOWCAP』(*)の委員は10人中5人が中韓で占められています。
議長は中国の李明華氏で、『南京大虐殺関連史料』申請の主体となった中国・档案館の副館長を務める人物でもある。彼はアーキビスト(学術資料保存の専門家)としてIACメンバーとも深いつながりがありますが、日本には現状、こうしたネットワークがない。今から3年あまり前、MOWCAPは日本に委員就任を打診しましたが、中韓との衝突を避けたい民主党政権下の文科省が断ってしまったのです」
【*MOWCAPの委員は2年ごとに開かれる総会で決定。ユネスコのナショナル・コミッティ(国内委員会)が置かれている国がメンバーを推薦、総会の承認を経て決定する】
早ければ来年(2017年)7月にも開催される国際諮問委員会。慰安婦史料登録阻止のために日本は何をすべきか。
「まずは、今回登録された南京大虐殺関連史料の中で『真正性』『完全性』に問題のある史料を列挙し、登録の取り消しを求めるべきです。また、最も重要かつ緊急を要するのは、次回の世界記憶遺産審議プロセスに『(申請)史料の全面公開』や『審議の公開』といった透明性の高い新制度を導入するようユネスコ側に働き掛けることです。
今年5月に開催予定のユネスコ執行委員会で3分の2以上の賛同を得られればこの新制度が導入されますが、それすらできなければ、『慰安婦関連史料』でも今回の二の舞いを演じることは火を見るより明らかです」(高橋教授)
※SAPIO2016年2月号