「2020年には韓国の1人当たりGDPが日本と同水準になる」──2015年11月、韓国の主要メディアはIMFが発表した「世界経済見通し」のデータをもとに、そう一斉に報じた。しかし、このデータは“見せかけ”に過ぎない。経済評論家の三橋貴明氏は今の韓国経済を「アジア通貨危機の時よりひどい」と喝破する。
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確かに、日韓両国のGDP成長率を比べれば、韓国のほうが高い。このままウォン高・円安が今後も続くとすれば、ドルベースの1人当たりGDPは韓国のほうが高くなる可能性はある。しかし、だからといって韓国国民が豊かになるわけではない。
そもそも韓国経済は、国民をできるだけ安い賃金で働かせ、グローバルな価格競争力を高めるという成長モデルを採用してきた。国内での格差が拡大したほうが韓国経済にとっては望ましいのである。
そのため「成長」と「貧困」が同時発生してきたのが韓国の特徴であり、1人当たりGDPで日本を追い抜いても、大半の韓国国民は日本国民より貧しいままという事態は容易に想像できる。
実際、韓国経済の現状はアジア通貨危機の時よりひどい。2015年9月の韓国の消費者物価指数(CPI)の上昇率は0.6%、10月も0.9%と11か月連続で1.0%を下回った。
韓国統計庁が統計を始めて以降、インフレ率のこれまでの最低値は、アジア通貨危機後の1999年の0.8%。韓国のインフレ率はアジア通貨危機の時以上に低迷し、史上最低を更新しそうな状況だ。
今の韓国は貴族階級「両班」が支配した李氏朝鮮時代に戻ったかのようだ。今は財閥一族が貴族のごとき生活を謳歌している。たとえば、サムスンの李健熙会長が2014年に受け取った配当金はなんと185億円に上った。
一方で、大半の国民の実質賃金は伸び悩み、膨らむ一方の家計債務は史上最高の1100兆ウォン(約110兆円)を突破するまでになっている。過去1年間に「貧困のため、食料が買えなかった経験」を持つ人の割合は、日本が2%、中国が8%であるのに対して、韓国はなんと26%に及ぶとのデータ(2013年)もある。