昭和の時代には、各界に“ドン”や“天皇”と呼ばれるような天才・異才がいた。中でも世界を魅了したのが映画監督の黒澤明であり、俳優の勝新太郎。その2人によるガチンコバトルが、『影武者』の撮影現場で勃発した。
勝新太郎:「俺は出ないよ」
黒澤明:「監督が二人いたら映画はできない。だから降りてもらうことに決めた」【出典:田崎健太著「偶然完全 勝新太郎伝」(講談社+α文庫)】
1979年、黒澤ファンであり、また自らも映画監督である勝は、並々ならぬ演技プランを描き『影武者』撮影に臨んだはずだった……自分の演技を確認するためのビデオカメラの持ち込みを黒澤に拒絶されるまでは。結局どちらも折れることなく、勝は降板した。
※SAPIO2016年2月号