今月13日、長野県野沢温泉村のスキー場で、コース外を滑っているうちに遭難したフィンランド人のスキー客6人が救助されるというニュースがあった。はた迷惑な話だが、実は野沢温泉村では条例で、コース外の遭難については救助費用を遭難者に求めると決めている。彼らの救出にはどのくらいの費用が請求されるのだろうか。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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その条例は平成22年12月に施行された「野沢温泉村スキー場安全条例」といい、スキー場の安全条例としては全国初という。その第11条に「スキーヤーは、第7条第1項に定められたスキー場区域に属さない区域において発生した事故により捜索救助を受けた場合は、その費用を指定管理者に弁償しなければならない」と明記してあった。
野沢温泉村役場によると、
「条例を作った直接の動機は、スキー場の利用者とスキー場が法的なトラブルがおきることがあり、それを整理するためです。遭難者への費用の請求は登山のケースと同様に考えました」(以下、「」はすべて村役場担当者)
遭難活動は、まず警察に届けられ、そこから自治体が作る遭難対策派遣協議会に捜索者の派遣要請がかかる。費用はここから始まる。今回のフィンランド人救出には3名の捜索者を出した。費用はそこからかかる。
「捜索者の派遣費用が日当でだいたい1万5千円から2万円。危険な地域に入るので捜索者も保険に加入する必要があり、その保健代も同額です」
つまり捜索者ひとりあたり3万円から4万円というところ。今回の救出では3名派遣したので、最大で12万円が請求される。
「他にもスキー場が救出のために時間外で運営したゴンドラリフト、スノーモービルなどもスキー場から請求される可能性があります」
救出にはヘリコプターが使用されたが、今回は長野県警の所有だったので、「費用は請求しません」と長野県警はいう。しかしプライベートにヘリコプターをチャーターすると、100万円代の費用が加算されることもある。ほんの遊び心がずいぶん高くつく。同村ではこれまで数十件の救助費用を請求したが、一度も取りっぱぐれたことはないそうだ。
それにしてもなぜコース外に出てしまう人が後を絶たないのか。同村役場の人は「外国人客が増えてきたことが背景にある」という。資料がある平成22年までのデータでは、救助された人は最高で年間6人だった。それが平成23年に13人、同24年6人、同25年12人、同26年が13人と急カーブで増えている。
「平成23年ごろからオーストラリアなど海外のスキーヤーに日本ブームが来たんです。彼らは新雪を好むので、わざと外に出てしまう。私たちも英語のチラシなどを作って警告していてこの間のフィンランドの方もそれを知りつつ、コース外に出て遭難していました。腕に覚えのあるスキーヤーほど外に出て、遭難する傾向がありますね」