中国の習近平国家主席が1月1日の朝、新年にあたり北京・中南海の執務室から元旦の辞を発表した際、習氏の背後の数段もある立派な書棚に収められていた蔵書の内容が話題になっている。
周代(紀元前11世紀~同8世紀)に書かれた詩を集めた中国最古の詩編「詩経」などの中国の古典のほか、17世紀のフランスの哲学者、デカルトの「方法序説」、現代ではキッシンジャー元米国務長官の「世界秩序」などだ。しかし、そのなかに社会主義国・中国の最高指導者として当然、読んでいるべきマルクス、エンゲルスやレーニンの著書が見当たらなかった。
さらに、は抗日戦争勝利70周年の昨年、人民文学出版社が出版した「抗日戦争」があったことで、「反日派である習氏の面目躍如」との声も出ている。
中国のニュース・ウェッブサイト「新浪新聞」が「習近平の中南海の執務室の書棚の蔵書、大暴露」との見出しで報じた。同記事によると、中国の古典では詩経のほか、唐宋八大家散文鑑賞大全集や宋詞選など、中国の近現代文学では魯迅全集と老舎全集だった。後者は文化大革命(1966~1976年)期に批判され、自殺した中国を代表する作家。文革は毛沢東主席が起こしたもので、毛沢東の崇拝者といわれる習氏らしからぬ選択といえなくもない。
さらに、欧米の書ではデカルトや、19世紀のドイツの化学者リービッヒの文選、ドイツの気象学者ヴェーゲナーの「大陸と海洋の起源」のほか、キッシンジャー氏の著作が収められている。
辞典類はすべて中国語版で、収録語数37万あまりの中国語辞書の決定版である「漢語大詞典」(全12巻)や「中国哲学大辞典」「外国小説鑑賞辞典」。
歴史書としては「抗日戦争」のほか、やはり抗日戦争がテーマで昨年発行された「歴史の教訓」。前者は著名な歴史家、王樹増氏の手になるもので、昨年6月、初版として10万部が出版されており、異例の発行部数だ。これは党員向けの学習書籍に指定されているためだ。しかも、同書の刊行はまだ「第1巻」だけで、今後も第2、第3巻などが発行されるとみられ、習氏が力を入れているのが分かる。
ところで、不思議なのは、中国建国の父である毛沢東の書籍がないこと。毛沢東選集や毛沢東語録など数千万部が発行されているが、習氏には興味がないようだ。また、共産主義の原典ともいえるマルクスの「資本論」や、マルクスとエンゲルスの共著「共産党宣言」、レーニンの代表的な著書である「国家と革命」も見当たらない。このため、ネット上では「日ごろから共産主義、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の重要性を強調している割には、習主席は関心がないらしい。奇怪だ」などとの書き込みもみられる。