犬や猫に触れると、幸せホルモン“オキシトシン”が分泌され、ストレスを和らげてくれるという。しかし、それだけじゃない。胸一杯の愛を飼い主に注いでくれる彼らの生き様は、私たちが人生を生き抜く上での大切なことを教えてくれている。今回は51才カウンセラー女性のエピソードを紹介します。
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独身で両親はすでに他界。きょうだいもいない私にとって、シーズーのボンだけが“家族”でした。
ところがボンが15才になった頃、がんを発病。1つ腫瘍を取ってもすぐに別の場所にできるし、高齢ということもあり、医者には「手術をして苦しみを長引かせるより、自然のまま逝かせた方がいいのでは」と言われました。私は迷いました。しかし、その時ボンが、「ボクは我慢できるよ、絶対治る。だからお母さん、手術して」と言った気がしました。大丈夫だからという意志がこもった瞳で、私をじっと見つめるのです。それで私は手術を決意しました。
そして術後。ボンはドヤ顔でワンと一声吠えたんです。まるで、「うまくいったでしょ」とでもいうように。これまでほとんど吠えたことがなかったのに、大きく、一声だけ…。彼の生をあきらめない姿が、そこにありました。
しかし、それから1週間もたたないうちに別の腫瘍が大きくなり、痛みで夜も眠れない日が続きました。口から食事もできず、胃にチューブを入れて、胃ろうの処置をすることに。この処置もすべきか迷いましたが、痛みに耐え、よろつきながらも自力でトイレに行こうとするボンの姿を見ていると、とことんまでやろうという気になったのです。今思えば、最後までボンに導かれた感じでした。
ほどなくして、ボンは息を引き取りましたが、死のギリギリまで、生きることをあきらめない強さは、今、ひとりで生きる私の原動力になっています。
※女性セブン2016年2月4日号