子供の悩みに、母親にしかできないことがある。家でできる学業のサポートについて、高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話『ホーツキさんちのオヤジ』(女性セブンにて連載された漫画)原案者であり、学習塾『探究学舎』代表の宝槻泰伸さんに話を聞いた。
* * *
子供は「なぜ勉強をするんだろう」「今やっている問題に意味はあるのかな」といった疑問を抱きます。思春期の子供は特にそうです。親はたいてい「いい高校や大学を出たほうがあなたの将来のためになる」「そんなことを考えるヒマがあったら勉強しろ」と言いがちです。
確かに学校教育はそういう価値観で勉強を教えていますが本来、勉強する意味はそうではない。勉強する意味は、その人にしかない人生のビジョンを作ることだと思います。医療、教育、芸能、スポーツ…人は社会に出たら何かしらの役割を担います。こんな人生を過ごしたい、あんな人物になりたいという考えを時間をかけてコツコツ作っていく。
私としては、学校を読み書きを学ぶ場と割り切り、家では勉強する意味を見つけ出せる力を養うことが必要だと思っています。
うちの父親は、ビジョン作りのさまざまなヒントをくれました。歴史漫画を買ってくれて感想を話し合ったり、魅力的な多くの大人に会わせてくれたり…。机に向かって問題集を解くだけが勉強ではありません。
だから、子供が「なんで勉強しなければいけないのか」と聞いてきたときは、一緒に考えてあげてください。「お母さんはこう考えているの」「あなたはどう思うの?」と、対話が大切です。
また、家庭で教えてほしい科目があるとしたら、理科と社会です。国・数・英は、大学入試のセンター試験で配点が大きいから、学校や塾で一生懸命教えます。ですが、理科と社会は、個性を作ってくれます。
ある学校の先生から「国・数・英はさまざまな仕事に役立つが、その知識と能力を使って、理科や社会に関することに携わることになる。理科と社会を学ぶからこそ、自分のやりたいことや将来の職業が見えてくる」と聞いたことがあります。
まったくその通りだと思います。ですから山に星座を見に行ったり、史跡を見学したり、親子で一緒にさまざまな体験して、この2科目を学んでください。
家庭では、学校教育だけでは見失いそうなビジョンを作れるように知性と感性を磨く。そうすることで、子供が受験で燃え尽きることも、やりたいことが見つからず無気力になることもなく、学ぶ意味を理解できるようになります。そうなれば、親がうるさく言わなくても、自分から必要な勉強をするようになります。
※女性セブン2016年2月4日号