「こんにちは。ハトヤ商会に勤務する、白ハトです。名前がなくてごめんなんしょ。実はうちの社長はわたしらのこと、誰が誰やら把握できてねんだ」
それもそのはず、ハトヤ商会には常時500羽ほどの白ハトがいて、イベントのたびに放鳥されているのである。
「わたしらの仕事は、ここぞ! というタイミングで飛び立ってイベントを盛り上げること。いちばん多いのはお葬式で、1日に4~5件の依頼が来ることも珍しくねぇ。103才のかたが亡くなったときは年齢と同じ数のハトを飛ばしてほしいって頼まれて、社長が大張り切りしたこともあったっけなぁ」
ここにいるハトは、放鳥されたあと、会社に戻ってくるように訓練された精鋭たち。仕事ができるようになるまで、2~3年かかるというが、「それでも、遠くからだと帰って来られねぇヤツはけっこういるよね。天敵にやられっから」とのこと。
彼らの仕事は福島県内だけにとどまらない。なんとEXILEやAKB48などの野外コンサートでもパフォーマンスを盛り上げているというのだから、おそれいる。
社長の口癖は「ハトヤのために飛ばすんじゃない。イベントのために飛ばすんだ」。だからこそ、たとえ多くのハトが戻って来られそうもない条件でも、手塩にかけたハトを惜しげもなく、飛ばす。それが、プロだから。
「社長が最高のタイミングでハトを放ち、ハトはできるだけカッコ良く空を飛ぶ。つまり、わたしらは演出家とパフォーマーの関係ちゅうわけだ。わたしらは白いことがステイタスだから、水浴びは欠かせねぇ。週に1回のバスタイムには、みんな先を争って水に飛び込むんだよ。以前は結婚式の仕事も多かったらしいんだけんじょ、ここ数年は年に7~8回くらいかなぁ。花嫁さんがキレイに見えるよう、張り切って飛ぶよ!」
【プロフィール】
名前:白ハト 性別不明
年齢:不明
種類:ハト
勤務先:有限会社ハトヤ商会
職種:各種イベントの効果係
主な仕事内容: ブライダル・葬儀を主に、コンサートなどで空を舞う。
お給料: 基本給は通常のハト用総合飼料。仕事を終えて帰ってきたら、最高ランクの飼料をもらえる!
好きなこと: 夫婦で一緒にいること。
嫌いなこと:雨の日に飛ぶこと。
現在の悩み:天敵である猛禽類、タヌキ、ハクビシン、イタチ、猫などに狙われるのが怖くてたまらない…。
将来の夢:2020年の東京五輪の開会式で大空を飛びたい!
撮影■山口規子
※女性セブン2016年2月4日号