TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意を受け、経済アナリストの森永卓郎氏は「日本社会の米国化が加速する」と分析している。それはどういう意味なのか。森永氏が医療分野を例に解説する。
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一般的にモノの値段は売り手が決めるものですが、医療用医薬品は特殊で、厚労省が価格を決めています。それを公定薬価といい、厚労省が2年ごとに値下げの方向で見直しを行ない、医療費を抑制してきています。
だが、製薬会社からすればそれでは収益がズルズル落ちていくことになり、せっかく新薬を開発しても、その費用を回収できない恐れがある。そこで、米国の要求もあり、製薬会社に新薬開発を後押しする政策として、2012年の診療報酬改定時に「新薬創出加算制度」が試験的に導入されました。この制度が適用された新薬については、薬価見直しの適用外として価格が維持されるというものです。
当初は一時的な措置といわれていましたが、米国はこの制度を「恒久化すべき」と圧力をかけています。さらに、TPPがスタートすれば、米国の製薬会社の新薬を日本の厚労省がすぐに認可しないのは非関税障壁だと主張し出すことは目に見えています。その結果、日本の医療費も米国の水準に近づくように、どんどん上がっていくことが避けられないと考えています。
このような形で、これから様々な分野でTPPに基づく「ルールの統一」が進んでいくと思われます。しかも、そのルールはTPPを主導する米国のルールに合わせるということに他ならず、日本も米国同様、上流(金持ち)と下流(庶民)で受けられるサービスに大きな差が出る「二極化」がさらに進んでいくことは間違いありません。
その中での防衛策として、食の安全を求めるなら外食は避け、スーパーなどで原産国表示のある食材を買って来て、自分ですべて調理して食べ、会社へも弁当を持参することです。
さらに、何より一番の防衛策はお金持ちになることです。そのためには、投資の重要性がこれまで以上に高まるでしょう。
※マネーポスト2016年新春号