“国技”の威信を取り戻した──大相撲・初場所で琴奨菊(31才)が、2006年の栃東(39才、現玉ノ井親方)以来となる日本出身力士の優勝を果たした。現在、角界は白鵬(30才)、日馬富士(31才)、鶴竜(30才)の横綱3人を中心にモンゴル勢が実力を発揮している。そのなかで優勝できたのは妻・祐未さん(29才)の存在が大きかった。昨年7月、入籍した際、「優勝するからね」と約束し、その言葉を守り10年ぶりの快挙。しかも、自身の誕生日である1月30日は愛する妻との結婚式。これ以上ない贈り物となった。
地元の福岡・柳川市で開催された千秋楽のパブリックビューイングには250人が集まり、琴奨菊の祖父・一男さん(享年76)の遺影を手にした祖母の菊次粋子さん(82才)の姿が。優勝が決まると、「夫は相撲好きで、強くなるのを楽しみにしていた。天国で喜んでるはず」と感無量だった。
一方、父の菊次一典さん(60才)と母の美恵子さん(61才)は、会場で勇姿を見守った。優勝の瞬間、ふたりは大粒の涙をこぼし、ハンカチで顔を覆った。祖父の遺影を手に持った一典さんは「けがで苦労したが、やっと報われた」と話し、美恵子さんは「もう最高」と大喜びした。
13日目に豊ノ島(32才)に負けた琴奨菊。だが、同期で小学校時代からの親友でもある豊ノ島は琴奨菊の優勝後、花道で出迎え笑顔で握手。いのいちばんに祝福した。
琴奨菊は、3年前に知人の紹介で祐未さんと交際をスタートさせ、昨年7月に結婚。祐未さんは家では相撲の話はせず笑顔で支え、毎晩マッサージで体をほぐした。また、結婚後、フードマイスターの資格を取得し、ドレッシングなどはすべて手作り。五穀米にもこだわり、油を使わず揚げ物ができるオーブンレンジも購入した。この歴史的優勝を見つめた祐未さんは「輝いている大関を見て、ほれ直しました」と祝福のキス。左手薬指がキラリと光った。
琴奨菊には、取組直前に集中力を研ぎ澄ませるルーティンがある。それが“琴バウアー”。最後の仕切り前に大量の塩を左手で取って振り向き、両腕を広げ、胸を思いきり反らす。フィギュアスケート・荒川静香(34才)のイナバウアーになぞらえ、こう呼ばれている。
この動作を確立させたのは5年前の名古屋場所で、初めての大関取りに失敗したから。その後、“新しい自分”をつくるために、スポーツ心理学の第一人者である東海大・高妻容一教授のもとを訪れた。「迷いをかき消すためにやっています」と話すとおり、日本出身力士10年ぶりの優勝を達成。昨年は“五郎丸ポーズ”が大流行したが、来場所(3月)の綱取り次第によっては、今年の流行語大賞は“琴バウアー”に!?
※女性セブン2016年2月11日号