台湾で初の女性総統・蔡英文氏が選ばれ、またひとり世界に女性リーダーが誕生した。翻って日本では、安倍政権が盛んに「女性の社会進出」を唱えるのとは裏腹に、女性首相誕生の気配などほとんどないのが現状だ。
政治評論家の浅川博忠氏によれば、財務官僚時代に男たちを震え上がらせていた片山さつき氏や丸川珠代氏でさえ、政治家になってからは、周りに媚びる素振りを見せるようになったという。あれだけのキャリア、力量があっても、有力男性議員に媚びないと地位を得られないのが日本の政界の現実なのだ。
さらに日本の政治構造の問題もあるという。政治評論家の浅川博忠氏が指摘する。
「日本は議院内閣制なので、上にのし上がるにはどうしても“数の力”が必要です。自分の派閥を作って30人とか50人もの子分を持ち、彼らを養っていかなければならない。そのためには政治資金を集めることが必要ですが、女性議員の多くはカネ集めに気が向かない。自分の選挙区で生き残ることには力を入れても、子分を養うまでには至らないのが現状で、結局、有力男性議員に媚びて地位を上げるのが慣習になっている」
では、日本に女性首相が誕生する日は永遠に訪れないのか。「その期待はある」と話すのは、政治ジャーナリストの角谷浩一氏だ。
「かつての政界には、土井たか子氏や田中真紀子氏のように、男性議員以上にパワフルな女性政治家がいた。既存の女性議員が永田町の論理、自民党の派閥の論理に縛られて総裁選に出られないとしたら、むしろ在野の女性のほうが可能性はあるかもしれない。20年前に細川護熙氏が知事から国政に転じて総理になったように、ブームが起きる可能性もゼロではないと思います」
評論家の小沢遼子氏も期待をこめていう。
「今後、30代、40代の女性たちのなかから、世の中を背負っていく人たちが出てくるのでは。今は女性同士が政治の話をすることなんてほとんどありませんが、私は“産み育てるという人間の基本を営んでいる女性が、政治に関わらないでどうする”と思いますね」
※週刊ポスト2016年2月5日号