長寿国日本。しかしそれは、長い老後を老いと向き合って生きることでもある。日本で初めて【老化を遅らせるための食生活指針】を発表した人間総合科学大学教授の熊谷修さんは、老化と動物性たんぱく質との関係をこう話す。
「私たちが行った介入研究(対象者の生活に介入してデータをとる研究)で は、肉を積極的に生活に取り入れた、たんぱく質状態のいい人ほど、筋肉、骨格がしっかりしていて老化速度が遅いというデータを得ました。具体的には、たん ぱく質内の約60%を占める“血清アルブミン”の値が指標になります。
たんぱく質不足で血清アルブミンの値が低いグループは『新型栄養失調』と呼ばれ、栄 養不足で心臓病等が発病しやすいというデータも出ています。特に女性は、男性より老化しやすいが変化に気付きにくい。肌、筋肉、骨などの老化が加速する閉 経前後からは、動物性たんぱく質を積極的に摂ることをおすすめします」(熊谷さん・以下「」内同)
同じたんぱく質でも、植物性より動物性のほうが筋肉になりやすい。ダイエットを気にして肉を摂らないと、老化に拍車が掛かり、寝たきりになる恐れもあるので要注意だ。
「もちろん多様な食品群をバランスよく食べることも大切ですが、特に肉は、生で食べられないからこそ、焼いたり煮たり、いろいろな調理法を考えますよね。これも老化防止として、脳への良い刺激になるんですよ」
種類や部位ごとに味の違いを楽しんだり、調理法を考えることも老化防止につながる。
鶏胸肉は、高たんぱく質・低脂肪が特徴だ。火を通しすぎるとパサつきがちなので、下処理として身にフォークを刺したり、酒、塩適量をもみ込んで。ゆでたり蒸したりするとしっとりした食感に。
一般に肩、もも、ロースをスライサーで切ったときの切れ端を指すのは豚小間。安価だが、適度に脂身も含まれるので、旨みもあり。炒め物や煮物など広範囲に使える。
濃厚な味わいの鶏もも肉。皮の脂身が気になる人もいるが、ぜひ一緒に食べてほしいと熊谷さん。「皮が苦手な人もカリッとするまで焼けば、香ばしく食べられますよ」。
合いびき肉は、豚肉と牛肉を合わせてミンチにした肉。牛肉の旨みと豚肉の脂身がほどよく混じっているので、ハンバーグや肉団子など幅広い料理で使える。傷みやすいので保存は冷凍が安心。
赤身に脂身が重なり風味もいいのは豚ロース。牛より安価なので、厚切り肉を「リーズナブルにがっつり食べたい」人にもおすすめ。酒や片栗粉をふることで、やわらかく食べられる。
撮影■菅井淳子
※女性セブン2016年2月11日号