国内

小保方晴子氏手記の読後感と「感じざるを得ない矛盾」

著書『あの日』を出版した小保方晴子氏

「STAP細胞発見」の記者会見から約2年、小保方晴子氏が「告白本」を刊行した。研究者を志した動機から、STAP細胞論文発表までの経緯、捏造疑惑、そしてマスコミに追われた日々を記しているが、読後感は何ともすっきりしない。

 小保方氏の著書『あの日』(講談社)は、全体を通して、〈STAP細胞の研究中は、細胞の不思議さに魅了され、自分なりに一生懸命に実験に取り組んでまいりました〉〈一片の邪心もありませんでした〉と純粋に研究に打ち込んでいたことが強調されている。

 捏造疑惑については、〈仕組まれた〉ものとして、ある人物を名指しする。共同研究者の若山照彦・山梨大学教授である。

〈若山先生から(中略)幹細胞株化の論文の結論が実験の結果を得る前から事前に提案されていた〉

〈論文のストーリーに合わせた実験結果とそれを得るための具体的な実験計画が書かれ、「勝手に進めておきます」とのメールが送られてくることもあった〉

 とその手法に疑問を呈し、〈研究に対する主体性は若山先生へと移り、研究の方向性は私の思いとはどんどんかけ離れていってしまった〉とすべての原因が若山氏にあるように書いている。

 そして、疑惑が噴出した後は〈まるで私がマウスや細胞をすり替えたかのような推論を社会に植えつけた〉〈私は混入犯に仕立て上げられ、社会の大逆風の渦に巻き込まれていった〉と自らが被害者であることを訴える。しかし一方で、〈「(中略)できるだけ若山先生にご迷惑がかからないように証言します」という内容のメールを出した〉というから、彼女の中に矛盾した感情が渦巻いていたことがわかる(若山氏は「取材は受けない」と回答)。

 理研の調査委員会は2014年12月、STAP細胞はES細胞が混入したものであると発表した。何者かが若山氏の研究室からES細胞を盗んだとして兵庫県警に告発状を提出した、理研の元上級研究員でNPO法人理事長の石川智久氏がいう。

「詳しく記述した部分と、事実をはぐらかした部分とのコントラストに違和感を覚えます。ES細胞の混入に関しては、記述に不明確な点が多い」

 小保方氏は第8章「ハシゴは外された」では、理化学研究所が立ち上げた調査委員会について、〈長時間、複数回にわたり20歳以上も年上であろう著名な先生たちに追及され、嘲笑される恐怖に、思考力が低下し調査に耐えうる精神状態ではなくなってしまっていた〉と不満を露わにする。逆の視点で見れば、彼女には長時間、複数回にわたって説明する機会があったということになるが、なぜか彼女は〈厳しい追及が緩むことはなかった〉と被害者意識だけを膨らませる。

関連記事

トピックス

現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン