【マンガ紹介】『神様の横顔(1)』/朔ユキ蔵/講談社/616円
アイドルグループのセンター。劇団のトップスター…。いるだけで目を惹きつける人、というのがいます。闘って勝ち取るのではなく、本人の意志や努力にかかわらず(努力していないということではもちろんない)、どうしようもなく、最初からそうなってしまう「天才」たち。
彼らは多くの人を幸せにしているわけですが、その一方で、同じ道を行く人に日々その埋めがたい差を見せつけて傷つけ続ける、無自覚に残酷な人でもあるわけで…。
そして私はこの天才の残酷性が大好物。『神様の横顔』の帯に「天才VS秀才」の文字を見た瞬間「好物、来た!」とガッツポーズです。
本作での天才は、宝塚音楽学校の男子校版と思しき名門演劇学校の新入生・麦蒔。対する秀才は学年1位の上級生・千鳥。麦蒔は「死体になる」授業で急にいなくなるという誰とも違う表現をしたり、小さく呟く拙いセリフでスターは〈耳も奪う〉ことを示したり、次々と天才性を披露してゾクゾクさせるわけですが…。
以前、本コラムでジャズ漫画『BLUE GIANT』について触れた時には「持つ者」と「持たざる者」の差がきっぱりと描かれているところがいい、的なことを書いたのですが、今回は持たざる者側の千鳥に持つ者・麦蒔に拮抗した魅力があって、むしろそこがいい!
負けている自分を凝視し続け(しかも未熟な天才を指導までする)、暗い目で勝つために爪をとぐ秀才が、教師の言う〈演技で資質を越え〉ることができるかも!? と思わせます。
アイドルグループ好き、宝塚好き、プロレス好き(私)など天才やスターに思い入れのあるかた、あれこれ重ねつつお楽しみください。
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2016年2月11日号