「台湾の独立分子が独立運動を続ければ、中国は台湾を武力統一するしかない」。これは中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情勢紙「環球時報」が中国人民解放軍の元少将の発言として伝えたもの。独立を志向する台湾の民主進歩党(民進党)党首の蔡英文主席が1月の台湾総統選挙で勝利したことで、中国側が蔡氏に送った「政治的警告」と香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は報じている。
この元少将は中国戦略文化促進会常務副会長を務める羅援氏。軍の現役時代から「強硬派の論客」といわれていた。
羅氏は、中国共産党調査部長などを務め、台湾工作などを担当していた羅青長氏の三男で、18歳で軍に入隊し、軍最高の研究機関である軍事科学院で戦略部第二研究室主任、世界軍事研究部副部長を歴任した。実戦経験はなく、もともとは後方で宣伝や研究を行う非軍事部門の出身で、過激な言動で知られる。
2014年5月、陸上自衛隊が離島奪還訓練をした際には、「中日が開戦すれば、日本は必ず一面火の海と化す」と発言したり、その2日後、自衛隊の偵察機に中国の戦闘機が異常接近したことについては、「撃墜しなかっただけでも、中国は我慢している」と語っているほどだ。
今回は台湾総統選で、独立色が色濃い民進党の蔡氏が当選したことで、台湾に舌鋒鋭く迫ったというわけだ。
いわく、「中国人は中国人と戦わないというものの、もし台湾独立分子が我々中国人の我慢ならないような言動を浴びせるならば、われわれには武力で中国を統一する選択肢しか残されないだろう」などというものだ。
ネット上では、「羅援特有のはったりだ」との書き込みが見られるが、羅氏は習近平国家主席とは幼馴染で、仲が良いとの噂があるだけに、「羅氏をあまり軽視することはできない」との声もある。
中国国営の中国中央テレビ局は蔡氏の当選1週間後、台湾の対岸に位置する福建省駐留人民解放軍31軍が東南沿海の島嶼で大規模上陸作戦を展開したと報じた。台湾の国防部は「この演習は昨年行われており、ビデオ放送だ」との見方を明らかにしている。
しかし、これらの動きについて、「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は多くの専門家の意見として、「明らかに民進党をけん制する狙いがある。中国の台湾への政治的な警告だ。いずれにしても、万一の場合、北京は中台問題を解決するために、『非平和的方式』を放棄していないことを蔡氏側に分からせようとしているのだ」と報じている。