女子レスリングで五輪3大会連続金メダルを獲得している伊調馨が、ロシアで開催されたヤリギン国際大会で13年ぶりに敗れた。このニュースが伝わったとき、モンゴルレスリング協会会長をつとめる元横綱朝青龍はTwitterで「10-0(※得点)でモンゴルが日本に勝ったよ!」「Pride!」などツイートやRTを繰り返し、喜びを爆発させた。モンゴルの女子レスリングが、これまで世界のトップを独占してきた日本女子に「追いついた」瞬間だった。
伊調を破ってヤリギン国際大会で優勝したオホン・プレブドルジは22歳の大学生。これまで目立った戦績はなかったが、伊調を破ったことで一躍、世界のレスラーから注目される存在になった。
「テクニック的にはまだまだ発展途上ですが、足腰がとても強い。タックルに入ってきたところを腰の強さで返して得点にしていった。モンゴルの選手は全体的にそうなのですが、下半身がしっかりしているのが特徴です。若くて伸び盛りなので、勢いもありますね」(日本レスリング協会強化スタッフ)
女子レスリングが五輪の正式種目に加わったアテネ五輪から数えて、リオ五輪は4回目の五輪になる。世界レスリング連合(UWW)も普及に心を砕いてはいるが、女性と格闘技という組み合わせを敬遠する文化は根強く、競技力向上に苦戦している。そんななか、モンゴルは女性が格闘技をすること、厳しい練習をすることに対して抵抗が少ないという。
「欧米の指導者は男子と同じ過酷なトレーニングを女性に課すことに抵抗があります。声を荒げたり手を上げるなんてありえないとも。その点、モンゴルは良くも悪くも男女差がない。首都でも冬はマイナス10度になるような寒さと雪の中、外でトレーニングして鍛えていると聞きました。日本の女子も脱走に成功した選手はいないといわれる虎の穴、十日町の山奥にある合宿所で強化合宿をしていますが、環境だけならモンゴルのほうが過酷ですね。
いまの大相撲はモンゴル力士が席巻していますが、女子レスリングもモンゴル勢が日本の勢いを上回る日がくるかもしれません」(全国紙一般スポーツ担当記者)