田中角栄氏の金権政治を批判する急先鋒だった石原慎太郎氏が、『天才』というタイトルで上梓した新刊は、田中角栄の人生を一人称で書くというまさかの“霊言”だった。金権を批判したが、しかし政治家として田中角栄は天才で本当のインテリだと評価する石原氏に、現代の政治家について聞いた。
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〈石原慎太郎氏と田中角栄氏、2人のもう一つの共通点が、アメリカと対峙したことである。石原氏は、角栄がアメリカに頼らない資源外交を展開したことが、ロッキード事件につながると見る。作中で角栄は、こう述懐する。『無念ながらこの国は未だにアメリカの属国ということを何とこの俺自身が証してしまったのかもしれない』〉(〈 〉内は編集部。以下同)
角さんが総裁になって初めての国政選挙で使った金が300億円だよ。ロッキード事件で授受したとされたのが5億円。300億の中の5億なんていうのははした金なんだよ。どこから出た金かなんて、角さんにわかるわけがない。つまり田中内閣というのは、アメリカの策略でやられたんだよ。その結果、田中角栄を否定することで、私たちは歴史を改竄してしまったんだ。それは後世にとって本当によくない。
アメリカというのは、自分に歯向かう人間が許せないんだな。俺が『「NO」と言える日本』を書いたときに、共著者の盛田(昭夫)さんはアメリカ版を出すときに逃げちゃったから単著で出したら、60万部売れた。こんな日本人はいないよ。それで、アメリカは俺のことを非常に憎んで、インタビューしたどこかの記者が、俺のことを「背広を着た日本の悪魔の化身だ」って言った。アメリカに悪魔の化身だって言われたら、光栄だね(笑い)。
〈石原氏は、本書のあとがきをこう締めくくる。『歴史への回顧に、もしもという言葉は禁句だとしても、無慈悲に奪われてしまった田中角栄という天才の人生は、この国にとって実は掛け替えのないものだったということを改めて知ることは、決して意味のないことではありはしまい』。「いま角さんが生きていたら」──石原氏は最近、よくそんな想像をするという。〉