寒い日が続くこの時期、家族で囲む食卓にピッタリなのは何といっても鍋料理だろう。北海道小樽市出身の精神科医・香山リカ氏が「思い出の鍋料理」を振り返った。
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私は札幌生まれの小樽育ち、両親も釧路など港町の出身だったのに、父は何とサカナぎらい。その影響もあったのか、タラやサケなど魚中心の寄せ鍋でも必ず豚肉や鶏団子が入っていました。肉やサカナの出汁が出た鍋はなかなか複雑な味で、弟は小さな頃からシメにごはんを入れて必ず雑炊にしてました。
その甲斐があってか、みるみる体重が増え、子ども相撲大会ではいつも優勝。北海道は当時、たくさん力士を輩出していたので、両親は「そのうち相撲部屋からスカウトが来て、本当のちゃんこを作るようになるのではないか」と半ば期待、半ば心配していましたが、スカウトは来ませんでした(笑い)。その後、上京してはじめて本格的な「ちゃんこ鍋」の店に行ったとき、「なんだ、本当に我が家の鍋そのものじゃない」と思った記憶があります。
北海道らしさと言えば、やっぱりいくら父が苦手と言っても、海産物がたっぷり入っていたことでしょうか。タラやサケだけではなく、ホッキ、ホタテなどの貝やイカなどもどんどん投入されていました。父はもう亡くなりましたが、海産物をよけながら鍋から肉を引きずり出して食べていた姿をなつかしく思い出しますね。
※週刊ポスト2016年2月12日号