国内

年金博士が安倍政権に苦言「積立金の株運用は博打」

 日経平均株価は昨年、約15年ぶりに2万円台を回復。年末終値は1万9000円台と、19年ぶりの高値をつけた。しかし、2016年の年始から株価は急落。6営業日連続で下落し、1月21日には1万6000円近くまで下げ、2月1日現在、1万7000円台で推移している。

 といわれても、「株なんてやってないし興味がない」という人は多いだろう。でも実は、株価の変動は、誰もにとって無関係ではない。国民が年金保険料として支払っている大事なお金は、株価変動の影響を受けているからだ。年金博士として有名な社会保険労務士の北村庄吾さんが言う。

「国民が支払う厚生年金と国民年金保険料は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に預けられ、そのうちの半分の50%は株で運用されている。今年に入ってからの株価下落で約6兆円の損失が出ていると指摘されています。それはつまり、支払った年金保険料が失われているということです」

 GPIFが運用しているのは約135兆円。従来、年金積立金は日本国債などを中心に、ローリスク・ローリターンで運用されていたが、2014年10月にアベノミクスの一環で、日本株式による運用比率が12%から25%へ高められた。そのほか、外国株式が25%と、変動が大きい株による運用が50%を占めており、株価が上昇すればお金は増えるが、下がれば減る。

 北村さんは「年金積立金の半分を株で運用するのはまるで博打。ありえない」と指摘する。

「こんな危険なことは他国ではやっていません。GPIFの損失について、塩崎恭久厚生労働相は記者会見で、“短期的な変動に過度にとらわれることなく、長期的に安全かつ効率的な運用が行われることが大事だ”と言っていて、長期的に見たら一喜一憂しちゃいけないよ、とでも言いたげですが、まるで他人事のようです」(北村さん)

 株なんて損をしそうだから手も出したくない、小難しいし関係ない──そう思っていた人の年金保険料は、政府によって運用資金に使われ、大損を出していたのだ。

 もちろん、株価が上がれば損失は取り戻せるかもしれないが、そんなことは保証されていないし、むしろ、さらに株価が下がれば、もっと損をする。これは、“消えた年金問題”どころの騒ぎではないのだ。

※女性セブン2016年2月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン