作家・落合信彦氏は今、この地球上に3つの「戦争の火種」がくすぶっていると指摘する。「米ロ」「朝鮮半島」、そして「サウジアラビアとイラン」だ。落合氏はその火種のキーマンの一人である北朝鮮の金正恩第一書記を、「プーチンに並ぶ暴君」と称し戦火を招く可能性が高いと指摘する。
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金正恩は新年早々、核実験を強行した。「水爆実験」と主張しているが、おそらく実際は原子爆弾だろう。現時点での核技術はそこまで確立されてないと考えられるが、核実験を繰り返せば弾道ミサイルに搭載できるくらいに小型化することも可能になる。
核実験を実施すれば、間違いなく世界から猛烈な批判を浴びる。制裁は強化され、国際社会で孤立する。それを分かっていながら暴挙を繰り返すのはまったく理屈に合わないが、自分のことしか考えない独裁者は破滅まで突き進む。だからこそ恐ろしいのだ。
すでに韓国との間では、緊張が極限にまで高まっている。ちょっとしたきっかけで、たちまち戦争になりかねない。金正恩は軍に対しすでに「完全武装・準戦時体制」を宣言して韓国といつでも戦えるよう命じている。いつ「攻撃命令」が出ても不思議ではない。
北朝鮮では、金正恩体制に対する不満が高まっていることは間違いない。ただし、よく言われているように近いうちにクーデターが起きるかと聞かれると、答えはノーだ。
金正恩は、側近を次々に粛清している。その理由は(金正恩がまともな思考回路ではないことはもちろんだが)北朝鮮国内の5人に3人がインフォーマー(密告者)だからだ。少しでも反体制的な動きがあればすぐに金正恩に密告され、抹殺される。仮に本当に金正恩体制を転覆させようとするならば、誰にも相談せずたった1人で計画し、実行し、そして自らも命を捨てるそんな人物にしかできないはずだ。
それは近いうちに起こることではないだろう。とすれば、金正恩の独裁はしばらく続くと見るべきだ。
一度戦争が起きれば、どんな結果になっても朝鮮半島は大混乱に陥る。仮に統一されるとしても、約2500万人の北朝鮮の人々を、約5000万人の韓国で支えることなどできるわけがない。多くが難民となって、日本にやってくる可能性もある。我が国はその脅威をもっと真剣に考えるべきだ。
※SAPIO2016年3月号