結婚して20年以上の夫婦の離婚、いわゆる「熟年離婚」は2014年に3万6800件を数え、25年前の7割増となった。夫が妻から見捨てられるケースのみならず、最近では夫から切り出す離婚も増えているという。離婚カウンセラーの岡野あつこ氏によると、10年ほど前までは、女性が離婚を求めるケースが8割だったが、現在は男性から切り出すケースが4割に急増しているという。
これまで数多の離婚に関わってきたフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士は「離婚をゴールに設定せず、どう幸せになるかということを考えておくことが大切だ」と力説する。
ただし、新たな出会いを求めるならば、“新恋人”を作るのは離婚が成立するまで待つことが大切だという。
「男性は寂しさを埋めるために、離婚前から新たな女性を持ちたがる。たとえ妻以外に好きな人ができてしまったとしても離婚するまでは妻に正直に伝えることは得策ではありません。離婚したい理由は、夫婦間に問題があるからなのに、妻は“他に女ができたからだ”と誤解するようになり、協議が長引く原因となります」(同前)
また、離婚後の生活をバラ色と考えがちなのも「男から切り出す離婚」が陥りやすい失敗だという。誰もが幸せな生活を送れるわけではない。
「女性は離婚後も子や孫との関係を維持しやすいが、男性は子や孫と疎遠になることが多い。それでいながら、孤独に弱いのは圧倒的に男性です。趣味やスポーツなど仕事以外の友人関係が希薄だと、余計に生活に刺激を失い認知症になる人もいる。
また孤独を癒すために足を運んだ水商売のお店で出会った女性の甘い誘いに、多額のお金を騙し取られるなんて話は笑えません」(田村弁護士)
岡野氏は「妻と別れる」際には、長年連れ添った妻への“礼儀”を絶対に忘れてはならないと注意する。
「離婚となると、財産や慰謝料を巡る勝ち負けばかりが重視されてしまう。妻に不満があるから離婚に踏み切るにせよ、何十年も連れ添った妻だからこそ、財産はフェアに分け、妻も幸せになれる道を模索したいところです。実際、それができた男性は、離婚後に充実したセカンドライフを送っている傾向があります」
「妻と別れられるものなら別れてみたい」と願望を抱く男性は少なくないかもしれないが、本当に別れるとなれば、大きな覚悟が必要なのだ。
その覚悟が持てないならば、思いとどまるのが“正解”なのだろう。
※週刊ポスト2016年2月12日号