国際情報

ニカラグアで12年の獄中生活を送った日本人の告白(4/4)

ティピタパの刑務所に移り少し状況は好転。右が服部重次氏

 中米・ニカラグアで、身に覚えのない罪状で12年間も投獄され、再審請求中の服部重次氏(67歳)の体験談レポート最終回。本裁判で禁錮18年の有罪判決を下された後、どのように獄中で生き延びたのか。

 * * *
 生命保険金の受取人ではないにも関わらず、「1億円を目当てにした殺人」の単独犯として、グラナダ刑務所に収監された(1997年)服部氏は、プリズン・ギャングの脅しや、栄養失調にも負けず、本裁判までの日々を耐え抜いた。ところが、その本裁判でも正体不明の悪意によって、保険証書の証拠提出を阻まれ、さらに15年もの間、ニカラグアの刑務所で過ごさねばならない状況に追い込まれてしまったのである。

「地裁判決の後、ただちに控訴しましたが、圧倒的な絶望感に襲われました。それからの約2年間は、本裁判までの3年間と同じように鬱々として過ごしましたが、さすがに、それだけの時間が経つと、スペイン語も多少は理解できるようになり、他の囚人たちともコミュニケーションが生まれるようになりました」

 そこで役だったのが、かつて熱中した将棋である。

「ニカラグア人たちは、オセロと将棋を足して2で割ったようなルールの『タブレット』という盤上ゲームに熱中していました。私は一時期、将棋に熱中していたこともあって、それなりにタブレットが強かったのです。ゲームは言葉が通じなくても一緒に遊べますから、それで、囚人たちと仲良くなることができました」

 さらに、日本大使館も、苦境の服部氏に救いの手を差し伸べた。

「私の家族や親族は皆、日本在住だったので、ニカラグア人や地元在住の外国籍の囚人たちのように、食糧を差し入れしてくれるような人はいません。配給されるガジョピントだけでは何度も栄養失調になり、死んでしまうと思いました。

 そこで、無理を承知で大使館の方にお願いしてみたところ、『日用品および食材の購入費用』として、毎月30ドルを戴けることになったのです。おかげで、米やタマネギ、ニンニク、それに塩と砂糖を購入できるようになりました。このような援助がなければ、私は雑居房の中で死んでいたかもしれません。本当に感謝しています」

 最低限の食事を得られるようになり、タブレットを通じて、周囲の囚人たちとも少しずつコミュニケーションがとれるようになった服部氏だが、それ以降、なにもかもが順調だったわけではない。

「一緒にゲームができるようになったとはいえ、周囲にいるのは凶悪な囚人たちです。数秒前まで笑っていても、その直後に豹変することも多々ありました。ニカラグア人は、ほとんどがクリスチャンなのですが、ある時、一人の囚人が冗談めかして『君は日本人だから、ブッディストだろ』と英語で話しかけてきました。

 続けて、『ブッダは神さまではないと思うけど』と言ったので、私はすこしムッとして、『いや、君こそ間違っている。ブッダはキリストより偉いんだ』と反論したら、最初の笑い目が一変して、ものすごく恐ろしい目つきになって……。その彼のハーフパンツをみたら、側面が膨らんでいるんです。ベッドの脚を削って作るナイフを持っていました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン