日本銀行が1月29日、初めて「マイナス金利」導入を決定。2月16日からマイナス0.1%の金利が適用されることになった。ちなみに、昨年までに、EUの中央銀行(ECB)やスイス、デンマーク、スウェーデンでは導入されている。
マイナス金利が導入されると、住宅ローンの金利が下がる。これは、家やマンションの購入を検討している人にとってはチャンス到来といえるだろう。今、住宅ローンを借りている人も、借り換えをして安い金利に切り替える絶好の機会だ。
ニッセイ基礎研究所シニアエコノミストの上野剛志さんはこう語る。
「マイナス金利導入によって実際、住宅ローン金利は下がり始めています。三菱東京UFJ銀行はこの2月からの金利を年1.05%(10年固定型・最優遇金利)に引き下げました。これは過去最低の金利です」
では、そのまま金利が下がり続けたらどうなるのか。デンマークでは一部の住宅ローンがマイナス金利になり、「借りたらお金がもらえる」という信じられないような状況が現実に起きている。
「デンマークの例は特殊な条件下であって、実際に日本で住宅ローンのマイナス金利が起きる可能性は極めて低い。銀行は損をするだけなので、それならば貸し出さないほうが得だからです」(上野さん)
ところが、同様にマイナス金利を導入しているスイスでは、住宅ローン金利が逆に上昇している。エコノミストの中原圭介さんは「マイナス金利の影響で銀行は貸出の金利を下げざるを得なくなり、収益が悪化しました。その穴埋めのために住宅ローンの金利を上げた」と説明する。
さらにヨーロッパではATMなどの手数料を引き上げる動きもある。中原さんはこう予測する。
「日本でもマイナス金利が長期化すれば、銀行がなんとかお金を稼ごうと、ATM手数料や振込手数料を上げる可能性は高い」
さらに、先んじて導入されたヨーロッパでは気になる状況が起こっているという。
「マイナス金利を導入したヨーロッパ諸国では年金の運用がまともにできなくなり、スイスでは“将来、年金が支給されるかどうか”という事態に陥っています」(中原さん)
日本の年金は、安定的な投資先である日本国債などで運用されてきた。だが、マイナス金利によって国債の金利が低くなれば、予定していた運用益が上がらなくなる。
「切羽詰まってリスクのある株式などに投資するしかなくなりますが、株価が暴落すれば、運用益どころか大きな損が出てしまう」(中原さん)
影響を受けるのは年金だけではない。同様に日本国債などを中心に運用されてきた貯蓄性の高い生命保険や、年金の足しにと加入していた終身保険、学資保険などの運用も悪化し、「当然、利率は下がることになる」(中原さん)。
マイナス金利政策は、私たちの暮らしに、マイナスの影響を与えるかもしれないことを知っておこう。
※女性セブン2016年2月18日