慰安婦問題の解決を目指した昨年末の「日韓合意」からたった1か月余り。早くも韓国は「日本は約束を破った」と難癖をつけ始めた。しかし約束を破るどころか守ろうとしないのはあちらの方だ。歩み寄っては背中を切りつける「約束破り外交」には、ただただ呆れ果てるばかりである。
慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」が早くも怪しくなってきた。韓国側は1日、ソウルの外務省に別所浩郎・駐韓日本大使を呼び、日韓合意の「誠実な履行」を求めるクレームをつけた。日本政府が「軍や官憲による強制連行は(調査では)確認できなかった」とする報告書を国連女子差別撤廃委員会に提出したことへの反発だ。
日韓合意で「軍の関与」を認めて安倍首相が「心からのおわびと反省」を表明したのに、「日本が(合意の)趣旨と反する言行をしている」というわけだ。
しかし「軍の関与」とは慰安所の設置・管理や慰安婦の移送について旧日本軍が関与したことを認めたものであり、軍が強制連行したと認めたわけではない。
強制連行の事実を直接示す資料は見つかっておらず、韓国側が根拠としてきた「クマラスワミ報告書」の証言には虚偽があることも判明している。
韓国側のクレームは合意内容の「今後、国連など国際社会で(慰安婦問題に関して)互いに非難、批判を控える」に反しているというものだが、今回の報告書提出は国連の求めに応じ事実を述べたに過ぎない。
むしろ「韓国の方が約束を破っている」といえる出来事が起きている。それはソウルの日本大使館前に設置された「少女像」に関してである。合意に関する共同記者会見では尹炳世外相が「韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体と話し合いを行ない、適切な形で解決するよう努力する」とした。
ところが元慰安婦の支援団体である「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)などから猛反発を受けると、韓国はあっという間に変節。2日、朴元淳ソウル市長は日本大使館前に設置されている少女像について「民間で設置し、市民の象徴的なものになっているから」との理由で撤去は「難しい」と言及、韓国政府も同様の立場を取っている。
撤去どころか事態は悪化の一途をたどっている。韓国内で慰安婦像が増殖しているのだ。
挺対協によると慰安婦像は韓国内に27体。さらに今年1月下旬には釜山市内の市民団体が中心となり、同市内の日本総領事館前に慰安婦像を建立すると表明した。韓国政府が本腰を入れているとはとてもいえない。
※週刊ポスト2016年2月19日号