過酷なダイエット。食べたいものを我慢してストレスが溜まり、あげくリバウンドをして元の体重へ。ダメ人間だ…と落ち込むことはありません。あなたはデブに自信を持っていいのです。
動けるデブにもなれない。健康なデブでもない。そんなデブには歴史の面からデブの優位性を語ろう。人類の歴史――それは飢えの歴史ともいえる。明治大学国際日本学部教授の鹿島茂さんは言う。
「人間は長い間、飢餓におびえながら生きてきました。だから、太っていることへの憧れがありました。例えば、縄文時代に製作された土偶はまさにその象徴でした」
日本を含む世界の一部が豊食に向かったが、現代でも、豊かでない国ではデブに人気があるという。
「太っていることは豊かさと権力の象徴であり、そうでないと尊敬を集められないんです」 (鹿島さん)
人類は飢餓から解放されるために文明を発展させ、豊かな生活を目指した。
「飢えの心配がなくなると、太っていることがプラスではなくなります。これは太っていることが『悪』とされるようになった始まりといえるでしょう。ヨーロッパでは、ローマ帝国がそうでした。女性像を見ると、ギリシャ時代のものよりも、やせているんです。ローマ帝国時代は、デブ=ダメな人の象徴になっていました」(鹿島さん)
その後、ローマは崩壊し、人類は再び飢えに苦しむようになった。
「すると再びふくよかであることが善とされるようになりました。ルネッサンス初期に描かれた絵画は、ふくよかな女性が多い」(鹿島さん)
それから、数百年経って、再び人類は飢えから解放された。
「太っていることがいいか悪いかは、時代背景によって変わる。今、日本でやせていることがもてはやされているのは、豊かだからです。これから人口が減って、飢えに苦しむ人が増えれば、近いうちに『デブ最高』となりますよ」(鹿島さん)
フランスで話題になった『でぶ大全』(作品社)を翻訳した明治大学商学部教授の高遠弘美氏もこう指摘する。
「今の日本は痩身願望が強すぎます。人類史を見ても、この数十年に限った特異な時期といえます」
人を幸せにするのは、やせている人よりもデブなのだ。鹿島さんは言う。
「文化的には太っている人がダメかもしれませんが、長い歴史の中で、飢えと闘ってきた人類には飢えへの恐怖、つまり、太っていることへの安堵感が本能の中にインプットされています。本能はデブを求めているんです」
歴史的に見ても、デブは胸を張っていいのだ。何度でも言う。あなたのお腹は突き出してていいのだ。
※女性セブン2016年2月18日号