実に500日。執筆したコラム記事が「朴槿恵大統領への名誉毀損」にあたるとして起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長は、17か月にわたり法廷闘争を繰り広げた。その間には出国禁止令が出るなど、行動に制限も加えられた挙句の無罪だった。長く韓国を見てきた作家の井沢元彦氏と加藤氏が、韓国の「言論の自由」について語り合った。
井沢:加藤さんの事件で改めて感じましたが、韓国にはいまだに言論の自由がない。ソウル大学の李栄薫教授が、古文書などの資料を精査して「韓国の戦後教育では日本の植民地時代に収奪されたと教えているが、それは間違いだ」と主張したらマスコミに徹底的に叩かれました。
作家の金完燮さんは日本の言い分にも理があると書いたら逮捕されたあげく、本が青少年有害図書に指定されてしまった。また一昨年には『帝国の慰安婦』を書いた世宗大学の朴裕河教授も慰安婦に名誉毀損で訴えられました。 韓国では証拠に基づいて真実だと思うことを述べることすらできないんです。
加藤:私も、時の権力が許した枠のなかでしか研究、報道活動ができない窮屈な社会だと痛感しました。
井沢:その最大の原因であり、韓国の大きな過ちであるのが、戦後に国民を団結させるスローガンに反日を持ち出したことです。彼らは国内の矛盾を反日感情に託す。すると歴史の事実認識が違ってくる。