「テレビで新しい放送禁止用語ができている」──そんな噂が、インターネット上を飛び交っている。対象となる言葉はなんと「頑張れ」。発端はニュースサイト・トカナが掲載した記事で、「頑張れ」という言葉が、テレビ局によって放送禁止用語に指定されようとしているというのだ。
いくら自由にものがいえなくなっているテレビであっても、まさか「頑張れ」まで放送禁止だなんて……実際にこの記事を見たテレビ局社員の間では「そんなことあり得ない」と笑いものになっているという。だが、下請けの制作会社からは、違う事情が聞こえてきた。
「放送禁止などという大仰なレベルでは全くないが、敏感になっているのは確か。たとえばスポーツ関連の番組で選手にいう『頑張ってください』なんかも、いまは無責任じゃないかというクレームを気にして控えるようにしている」(制作会社のスタッフ)
そうした「頑張れ」自粛ムードは、東日本大震災を機に強まったという。当時、テレビから被災者に向けられた「頑張れ」という声、「頑張ろう東北」といったスローガンが、被災者に対して無配慮だという批判が巻き起こったのだ。情報番組などを担当する制作会社のディレクターはいう。
「震災以降、東北の人たちには無神経に『頑張れ』とはいえなくなった。それ以外の取材現場でも、『頑張れない』人や、すでに『頑張っている』人たちに『頑張れ』ということは失礼で、余計なプレッシャーを与えてしまうのかもしれない、というのを取材者側が必要以上に配慮するようになっています」
テレビ局よりも制作会社の現場レベルで、密かに「頑張れ」の自主規制が進んでいたのだ。しかし、そうした配慮が実際にどれだけ必要なのかは、疑問である。
「松岡修造のような許されるキャラクターの人が『頑張れ!』と叫んでも、何の問題にもなりませんからね(笑い)」(別の制作会社ディレクター)
※週刊ポスト2016年2月19日号