ここ数年、ダイエット・健康法として根強い人気を誇っているのが「糖質制限」だ。関連本が次々とベストセラーとなっている。糖質制限とは毎日の食事で、ご飯やパン、麺などの主食に多く含まれる「糖質」の摂取量を減らしていく食事法である。大森医院院長・石川みずえ氏が解説する。
「米や小麦が世界中で長く主食とされてきたことからわかるように、糖質は効率よく人間のエネルギー源になる重要な栄養素です。ところが、現代人は体を動かす機会が減り、糖質の過剰摂取に陥りがちになっています」
糖質を摂り過ぎると、「高血糖」と呼ばれる状態になる。それによって生まれる弊害をなくすのが糖質制限の目的である。
糖質を摂取すると体内でブドウ糖に分解され、血糖値が上昇する。上がった血糖値を下げるために分泌されるのがインスリンだ。糖質制限関連の著書が数多くある江部康二・高雄病院理事長はこういう。
「インスリンは人間の体に必要不可欠なホルモンですが、糖質を摂取すると血糖が上がり、過剰にインスリンが分泌されてしまいます。過剰なインスリン分泌は血糖を脂肪として蓄積させるはたらきがあり、肥満につながります。またそれを繰り返すと、インスリンのはたらきが低下して血糖値が下がりにくくなる。それがひどくなると糖尿病へとつながっていきます」(石川氏、以下「」内同)
糖尿病は様々な合併症を伴うことで知られる。血糖値が高い状態が続くため、血管が傷つき、脳卒中など動脈硬化症のリスクが高くなる。また、糖尿病になると大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの罹患率が約2倍になるという研究結果もある。
「最近では、糖質量の多い食生活を続けると認知症のリスクが高まるという研究結果も出ています。高血糖が脳の血管に損傷を及ぼしているからではないかと考えられます」
つまり、糖質摂取量を減らすことは、肥満を解消するだけでなく、様々な疾病リスクを低下させると考えられているのだ。
しかも、「太っていないから関係ない」という話でもない。
「日本の糖尿病患者の半数以上は肥満体型ではありません。日本人は欧米人に比べてインスリンを分泌する能力が低く、糖質の多い食事を続ける中で、太る前にインスリンのはたらきがおかしくなるケースが少なくないのです」
体型にかかわらず、食生活を見直したほうがいいという指摘である。
※週刊ポスト2016年2月19日号