元プロ野球選手でタレントの清原和博容疑者が、覚醒剤取締法違反(所持)容疑で警視庁に逮捕されてから約一週間経った。本人が使用を認めているため有罪となるのは間違いなさそうだ。刑法に定められた罪状が確定したあとは社会復帰の道を歩むことになるが、『脱法ドラッグの罠』の著者でライターの森鷹久さんは「中年男性が薬物依存から抜け出すのは、若者に比べてとても難しい」とその困難さを指摘する。
「覚せい剤や危険ドラッグなど、薬物依存の厚生施設でリハビリしている患者には若者が多いんです。逮捕されればもちろん、そうでなくても、若者の場合は親が子どもを心配して治療を受けさせる、という強制的な力が働きます。でも、中年以上の男性は自分で治療を受けると決めて行動しない限り、なかなか医療施設へやってこない。また、クスリをやっても自分は大丈夫と過信するのも中年男性によくあるパターンです」
中年男性が薬物依存から抜け出すのは難しく、繰り返す例があとを絶たない。たとえば、現在はNPO法人DARC職員として薬物中毒者向けの講演会を行っている田代まさしが薬物事犯で初めて逮捕されたのは45歳のとき。以降3回にわたり逮捕され2度の懲役を経ている。歌手で俳優の清水健太郎は、30代のときから薬物関連だけで6回逮捕され、2度の懲役を体験している。
1967年生まれの清原容疑者は現在48歳。薬物治療が難しい年代だといえる。さらに彼の場合は離婚して2人の子供の親権は妻が持つので一人暮らしだ。離れて暮らす両親も高齢で母は介護が必要な状態と伝えられることから、家族による強いバックアップはのぞめないだろう。また、彼自身が高校時代からスーパースターだったことも治療を難しくしている。
「逮捕されたことで強制的に薬物を摂れない期間はできます。ただ、社会復帰する段階で、彼ほどの有名人ともなれば様々な人間が誘惑してくるでしょう。しばらくは誰とも接触しない、させない無菌室に入るくらいの覚悟で人間関係を絶たないと、またクスリと縁ができてしまうでしょうね」(前出・森さん)
「平成26年の薬物・銃器情勢」(警視庁刑事局組織犯罪対策部)によれば、覚せい剤事犯で最も検挙人員が多い年齢層は40歳代、次いで30歳代。長期的にみると20歳代以下の若年層と30歳代は減少傾向にある一方で、40歳代以上は増加傾向で推移している。経験が少なく誘惑に弱いと思われがちな若者より、中年のほうが薬物の深みにはまり抜けられずにいるようだ。
海外では有名人が薬物依存を認めてリハビリ施設入りし、社会復帰する例が少なくない。『アイアンマン』の俳優ロバート・ダウニー・Jrや歌手のブリトニー・スピアーズ、スーパーモデルのケイト・モスなど、薬物依存からの復帰プログラムを専用施設で受けそれぞれの活動に復帰している。日本でも、同様の専用プログラムについてはもっと活用されるべきだろう。