現在のプロ野球一軍キャンプは、宮崎に巨人、ソフトバンク、オリックス、西武、広島の5球団、沖縄には海外から帰国してからの日本ハムと、後半に移動する巨人と広島、石垣島のロッテ、久米島の楽天を含めて9球団が集中している。
チームが集まれば、移動の手間が省けて練習試合やオープン戦が組みやすいし、ファンも集中するので“ハシゴ”してもらい、効率的に動員を稼げる点で、球団にメリットがある。
だが何よりメリットを享受するのは、キャンプを受け入れる自治体のほうだ。旅行シーズンではない春先に、多くの選手・スタッフやファン、そして報道関係者が押し寄せる経済効果は計り知れない。
例えば巨人に代わって近年、動員力ナンバー1に躍り出たソフトバンクでいえば、キャンプ期間中に訪れるファンは30万人。県内のホテル、旅館は週末を中心に満員、レンタカーの予約も満杯となる。
「キャンプ中は繁華街に人がれる。それにキャバクラなどの夜の店にはこの期間、地元だけでは女の子が足らないから、東京や大阪から女性を連れてくると聞いたよ」(宮崎市内の飲食店経営者)
ちなみに球団宿舎には、球団が押さえたフロア以外であれば一般客も泊まることができる。そのためキャンプ期間中は毎年、部屋の争奪戦が演じられる。同じホテルに宿泊すれば、食事会場やロビーなどで憧れの選手に近づけるというプレミア感が良いのだろう。各旅行会社も、このキャンプ需要をめぐって鎬を削っている。
「読売旅行や阪急交通社、西武トラベルなど、球団系列の旅行代理店がやはり優位に立っています。阪急交通では“阪神キャンプ見学ツアー”を企画。選手と一緒に撮る団体記念撮影と握手会をセットにしていますし、選手たちと同じホテルに泊まる宿泊プランを募集して人気です。巨人も公式ホームページでキャンプの見学ツアーを告知、クリックすると読売旅行のサイトに飛べるようにしている」(スポーツ紙デスク)
プロ野球キャンプは球団行事というだけでなく、地元の経済を潤す一大市場になっているのだ。
※週刊ポスト2016年2月19日号