人づきあいがなくなると老化が進む、というが、自分は同僚や友人と会っているから安心、と高をくくっている人も多いのでは? 実は同じ人づきあいでも、特定の相手とばかりつるんでいると「老化」していくのである。
元製造業・営業の男性(67)は一見、そこそこ活発に行動しているように見えるが、実は停滞感を感じているという。
「週に1回スポーツジムに通い始めたころは、同じような年金生活者が多くて、異業種なので最初は職場の話で盛り上がったが、最近では年金や保険、病気の話題ばかり。
帰りに行きつけの小料理屋に行くが、話し相手は昔なじみの女将と常連客。夕方のテレビニュースを見ながら、『俺たちの若い頃は……』となり、『昔はよかった』で、最後は必ず『時代が違う』から『怖い世の中だ』という結論で解散になる。新しいものを受け入れようとか、認めようとしないのは、俺たちの世代に共通しているのかも」
居酒屋でのこういう会話は、そこら中で耳にするような気がする。多くの定年退職者が口にするのは、「1日がすぐに終わる」ということ。
「1日が早いと1年も早く感じる。それで、仲間が集まったときは『もうすぐお迎えが来るな』というのが、いつもの話題のひとつ。そこから『若い頃なら、女の2~3人は泣いてくれたが……』という流れ。まるでいつもの決まったギャグで笑う吉本新喜劇みたいです(苦笑)」(元酒造メーカー勤務の69歳男性)
こうした状況を改善して人の交流を増やそうとして、元建設会社・営業の男性(66)は同好会を企画したが、なかなかうまくいかなかったという。
「住んでいるのが築40年の大規模マンションで、住人の平均年齢は65歳。定年後の余生を過ごしている住人が多いので、有志でマンション内に囲碁クラブや将棋クラブ、麻雀クラブなどを作ったんです。もう3年も続いているんですが、いまは参加メンバーが固定されて、マンネリ化している。
女性有志がお茶会も企画しているんですが、結局、そっちも参加メンバーが固定化してしまっているんです」
近所のスーパーに食材宅配サービスがあるので、行動範囲がマンションの敷地内で収まっている住民も多いのだという。外出しなくなると、どんどん外出が億劫になっていく。外に出なければ、人と会うこともなくなってしまうのである。
※週刊ポスト2016年2月19日号