ライフ

わが子の中学受験で心が折れる親が多いという事実について

受験で疲れ果てる人たち

 首都圏の私立中学の受験がほぼ終わった。受験生はもちろん、疲れ果てた親の姿がそこにはある。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。

 * * *
 私が育った千葉県の新興住宅地には、歴史や文化を感じさせるものがなく、東京で働くサラリーマンが寝るための家と、がんじがらめの管理教育の学校と、そこに通う子供の面倒をみる専業主婦がいるだけだった。

 もちろん、商店の家も働く母も、反発して暴走族になる子供も混じってはいたが、大多数は金太郎飴のような「千葉都民」だった。零細卸問屋の息子である私は、千葉都民の千葉都民による千葉都民ための町に馴染めず、早く他の土地に出たくて仕方がなかった。

 そして、東京の同じ町に住んで30年以上になる。千葉のあの町に比べれば、圧倒的に居心地がいい。歴史や文化に満ちており、さまざまな知的職業人が行き交っている。中卒や高卒の職人もけっこういるが、彼らには己の腕一本で食っているプライドがある。みんな目的なく群れることを好まない。こうした個人主義的な風土は、私のような外れ者には都合がいい。

 しかし、だ。東京には居住地として大きな欠陥がある。たとえば、教育環境がそうなのだ。東京は子供が育つ土地として歪んでいる。特に都心部は病んでいるとすら思う。

 私が住んでいる町はぎりぎり山手線の内側だ。今年、近所の公立小学校の6年生は、その6割ほどが私立中や都立中に行く。もう少し都心寄りの隣町は文教地区で、私立進学率8割、9割にのぼる。地元の公立中に進むのは余程親に「私立中は無用」という信念があるか、経済的に苦しいか、どちらかの場合のみである。

 そのような町で、「中学受験をしない」と親が腹を括ることはとても難しい。それなりのレベルの中学に行かせたければ、小学3年生の2月からの通塾が基本形となる。

 小学3年生2月段階で、子供たちの年齢は9歳か、8歳だ。成長の早い女の子の中にはしっかり者もいるが、男の子のほとんどにはまだ幼児性が残っている。自分から将来をどうしたい、といった希望、主体性があるわけもない。中学受験は、ほぼすべて親の意向で始まる。

 最初は親の意向でも、〈なんだかんだ乗り越えていくうちに、自分の意志でゴールに向かうようになる。きれい事じゃなくて、受験が精神的な成長の機会となりえているケースも多いはずだ〉と、当サイトの1月30日掲載コラムで書いた。中学受験を児童虐待のように見る向きもあり、それは違うよ、という意味合いを込めたつもりだ。

 ただ、こうも思っている。中学受験は、保護者虐待だ、と。言葉遊びをしたいのではない。地域環境的に「中学受験をしないわけにはいかない」親たちが、我が子の中学受験のためにかける労力の膨大さを思うと、それはやっぱり行き過ぎだと言いたくなるのである。

トピックス

過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン