今年、本格的に人気が出そうな食材がある。タイ料理に欠かせないパクチーだ。その広がり方を食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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これまで幾度となく「ブーム到来!」と言われてきたのに、実はまだ流行のピークはまるで先という食べ物は、いくつもある。最近では行列の代名詞として復活したポップコーンも少し前までは安居酒屋のお通しでしかお見かけしなかったし、プレミアムじゃない頃のロールケーキも地味なおやつの時代が長かった。
そして幾度となく「ブーム」の洗礼を受けながら、ここに来て「ブーム」卒業の兆しを見せている食材がある。「パクチー」である。「パクチー」はタイ名であり、英語では「コリアンダー」、中国でも「香菜」として親しまれている。葉だけではなく種子としてのコリアンダーはカレーに欠かせないスパイスだが、その話はまた別の機会に譲りたい。
本日の主役、葉のほうの「パクチー」はタイ料理などで何度となく「ブーム」を迎えていたが、ここ最近いよいよ日常で見かける機会が増えてきた。「ブーム」「トレンド」を越え、完全に定着期に入ったと言っていいだろう。
発信側でとりわけ本腰を入れているのが、SPICEの「S」とHERBの「B」を社名に掲げる、エスビー食品。同社のパクチー出荷実績はこの5年で、フレッシュ・ドライともそれぞれ3倍に。「本格的な浸透はまだ先」とは言うものの、展開については積極的。今年に入って家庭向け「クリーミーパクチーソース」のほか、サラダ用のシーズニング、パスタソース、カレーの素などジャンル横断でパクチー商品を発売。さらに業務用にもパクチーペーストなど新商材を投入し、完全な”パクチー推し”体制に入っている。
他メーカーにも”パクチー”推しの機運は急速に広まりつつある。今月、味の素もサラダ用シーズニング「Toss Sala」に「タイ風エスニック味」を投入。来月には焼きビーフンでおなじものケンミンが新しく「手軽に料理しタイ」というダジャレのようなネーミングのラインナップを立ち上げ、「トムヤムクン」にはパクチーフレーバーオイルが別添される。さらに同月、マルコメがパクチー入りの「トムヤンクン風みそ汁」を発売。”パクチーメニュー”の枠は急速に広がりつつある。