順調に人気を集めているNHK大河ドラマ『真田丸』。その魅力とはどんな点なのだろうか?
大河ドラマの金字塔・平均視聴率超を叩き出した『独眼竜政宗』(1987年)や、『八代将軍吉宗』(1995年)、『葵 徳川三代』(2000年)の脚本を書いたジェームス三木さんは『真田丸』(三谷幸喜・脚本)について、「家来が主君に質問をする」や「武将同士が道や廊下を歩きながら喋る」など、「かつてはあり得なかった表現がぽんぽん出てくる」斬新なところも魅力だと語る。
一方、コラムニストの今井舞さんは正反対に「古きよき大河」のにおいを感じると語る。
「大河といえば思い描くような話の内容、つまり割と有名な武将の生涯を描くといういちばんスタンダードな大河の流れを感じます。大人のおじさんが見られるドラマが本当になくなった中で、『半沢直樹』(TBS系)が一時、大人が楽しめるドラマとして話題になりましたが、やっぱり大河で楽しみたいという感じはありましたから。そんな『大人が見るもの』としての大河ドラマに戻ってくれたのがうれしいです」
今井さんがいちばん好きだったという『独眼竜政宗』との類似点も感じるという。
「男同士は腹に一物あって、女を描く時は、女の秋波に男がほとほと困らされるところが似ていますね。それは別に三谷さんがジェームス三木さんの真似をしているということではなく、面白いものを作ろうと思ったら、こういう形になるんだと思います。
最近のドラマでは、もっぱら説明ぜりふと呼ばれる、登場人物が全員出て来て、延々状況を説明しているシーンが多いなか、説明と感じさせずに処理するのも上手で、そこも懐かしく感じました」
例えば第3話で、昌幸(草刈正雄)が信幸(大泉洋)に上杉景勝(遠藤憲一)への書状を預けたシーン。実はこれ、わざと奪われるように昌幸が仕向けた罠だった。織田信長(吉田鋼太郎)の手に渡り、真田の価値を上げさせようと狙ったのだが、それを弟・信繁(堺雅人)は尊敬のまなざしで見つめ、兄・信幸はもうこの人にはついていけない、という顔で見つめる――。
武田が滅ぼされた後、北に上杉がいて、東に北条、そして織田がいっそう猛威を振るう状況をくどくど説明はせず、しかし、ちゃんとその切迫感が伝わってくる巧みさ。
「しかも、後に関ヶ原の戦いで、昌幸、信繁は西軍に、信幸は東軍に分かれるという物語の伏線にもなっているわけで、王道の大河というのはこうだっていう感じがします。
『真田丸』がかつての大河ほど視聴率がよくないのは、大河を見るという習慣がなくなったからでしょう。昔ながらの大河らしい大河がどういうものかというコンセンサスが取れていた時代なら、もっともっと数字が上がっていたのに、と思っています」(今井さん)
※女性セブン2016年2月25日号