認知症は高齢者の病気と誤解をしている人が多い。もちろん認知症は加齢とともに発症しやすい病気ではあるが、高齢でなくても発症することがあり、64才以下の人が発症する認知症を、若年性認知症と呼ぶ。
「一般的に、認知症というと、物忘れなどの記憶障害を思い浮かべがちですが、若年性認知症はそれとは異なる症状が多い。早期発見のためにも、症状を正しく知っておく必要があります」とは、メディカルクリニック柿の木坂の岩田誠さん(以下、「」内同)。
若年性認知症には主に4つの種類がある。アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、脳血管性認知症だ。代表格のアルツハイマー型認知症は、頭頂葉という、道具を操作したり、道順や方角を認知する能力に関係する場所が侵されて発症する。
テレビのリモコンが使えなくなったり、料理の手順がわからなくなったり、目的地と反対方面の電車に乗るなどの症状があれば、アルツハイマー型認知症の疑いがある。
「いずれの若年性認知症も、特徴は脳の新しい記憶をつかさどる部分は侵されないため、自分が変な行動をとっていることに気づく人が多いこと」
ところが、“ストレスでミスをしているだけ”と思い込んで、認知症と気づかず、発見が遅れることも少なくないのだ。病院で認知症の疑いがあると診断された場合、知能テストと画像診断の2つの検査を行うのが一般的だが、これだけで認知症か否かを診断されてしまった場合は、セカンドオピニオンを受けた方がいい。
というのも、若年性認知症は、通常の認知症に比べて診断が難しい病気で、とくに若年性アルツハイマー型認知症は、初期の段階では脳の委縮がほとんどなく、画像診断ではわからないことも多いからだ。
「よく話を聞いて、生活上での困りごとの相談に乗ったうえで判断を下す医師を見つけること。日本認知症学会認定の専門医かどうかを目安に選ぶといいでしょう」
若年性認知症になぜなるのかは不明で、予防法も、治療する方法さえも見つかっていない。
若年性認知症は、道に迷ったり、道具の使い方を間違えることによって、大きな事故につながる可能性がある。しかも、自分がとった行動の異常さを覚えているため、自分の状態を不安に思い、うつ状態に近い無気力状態や、不安神経症のような焦燥感を生じやすい。
「一度発症すると、進行を食い止めることはできません。ですから、大きなトラブルが起きる前に対策を立てておくことが必要です」
何かおかしいと感じたら、躊躇せず認知症の専門医に相談したい。
※女性セブン2016年2月25日号