かつて日本のサラリーマンは、入社した企業の社風に染まることが奨励された時代があった。不況やグローバル化という経済環境の変化で個人が重視されるようになると、社風について語られることは減った。とはいえ、社風は依然としてあり、それが会社の“活力”と連動していることも事実。日本の航空業界の社風を探った。
航空業界は会社の成り立ちが社風の形成に一役買っている。日本航空(JAL)は戦後、国策企業として半官半民でスタートし、長く航空業界トップの座に君臨してきた。一方の全日空(ANA)は完全な民間企業で、長く2番手に甘んじていた。航空業界に詳しい「月刊BOSS」編集委員の河野圭祐氏が解説する。
「“親方日の丸”の役所体質だった日本航空は、経営破綻後、稲盛和夫会長の下で改革が行われ、仕事に対する厳しさを徹底的に植え付けられた。改革の象徴の一つがトップ人事だ。これまでは企画・営業畑から多く輩出されたが、整備畑出身の大西賢会長とパイロット出身の植木義晴社長が誕生した。派閥によらず、やればやっただけ評価されて出世できるという雰囲気が生まれ、組織が活性化している」
対照的に純粋な民間企業として興った全日空。去年、HD社長に就任した片野坂真哉氏が「野武士精神が大事だ」と口にしているように、チャレンジを奨励する社風がある。
「片野坂社長はイケイケで攻めるタイプのやり手。ライバル・日本航空は経営再建途上でまだ行政の監視下にあるが、来年以降は経営の自由度が高まる。片野坂社長はそれを見越して、先手を打とうと海外路線の拡大を打ち出しており、血気盛んだ」(河野氏)
その全日空には「九州男児気質」があるという。
「鹿児島出身の片野坂社長を含め、過去15年、ほとんどの社長が九州出身というのは、とても偶然とは思えない。豪快で気っぷがよく、懐が深くて家族主義的。そんな九州男児のイメージが全日空にはある。片野坂社長も『九州人だから楽天的で、根が明るい』と自ら言うぐらい。最近は保守的な社員が増えた印象だが、やんちゃな感じはまだある程度残っている」(河野氏)
※SAPIO2016年3月号