ここに紹介する写真は、ロックバンド・クイーンのフレディ・マーキュリーがけん玉に興じる場面。1975年に東京タワーにほど近い東京プリンスホテルの庭で撮影されたもので、晩年のイメージと異なるロングヘアが印象的だ。
撮影したのは、音楽専門誌『MUSIC LIFE』で活躍した写真家・長谷部宏氏。長谷部氏は1965年にロンドンでビートルズを撮影したのち、1998年の同誌休刊まで名だたるロッカーたちを撮影し続けた。その数、実に500組以上というから驚く。
「1960年代後半~70年代は、海外ミュージシャンにとってまだ『日本文化』が物珍しかった時代でした。だから日本を感じさせる小道具が、彼らの素の表情を引き出すのに役に立ったんです。大物たちは、『ポーズをとってくれ』などとリクエストされることを極端に嫌がる。だから空気のようにそばにいて、じっとシャッターチャンスを待ちました。
最近デヴィッド・ボウイが亡くなってしまったように、黄金期のスターがひとり、またひとりと去っていく。私の写真がロック黄金期の貴重な資料と呼ばれるのは嬉しいですが、一方で寂しさも感じますね」(長谷部氏)
フレディ・マーキュリー以外も、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが三味線を携え、ビートルズ時代のジョン・レノンが「シェー!」のポーズをとるなど、長谷部氏が撮影したロックスターたちの写真は多種多様。『ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)に多数収録されている。
■Photo by Koh Hasebe / Shinko Music Archives
※週刊ポスト2016年2月26日号